「コンクールの使い方を間違えたら、恨みつらみにしかなりません」

しかし、なぜ吹奏楽は他のジャンルにはない特殊なシステムを採用しているのだろうか。

吹奏楽の強豪校がある地域で育ち、自身も小学生時代からチューバを演奏し、社会人になってからは中学校の吹奏楽部で約10年間、会社員のかたわら外部コーチとして指導に携わった経験を持つAさんはこう語る。

「例えば、代表に選出される団体のみを金賞にして、それ以外の団体は銀賞以下にするというやり方にすれば、確かに『ダメ金』という言葉はなくなるかもしれません。でも、やっぱり金賞に値する素晴らしい演奏をしたのであれば、金賞をあげるべきじゃないですか。大会の中での金・銀・銅という評価は、その演奏に対してなされるものであるし、それと枠が決まっている代表選考というのは、また別の話だと思います」

確かに、勝敗がはっきりする野球などのスポーツと音楽は違うので、吹奏楽独特のシステムがあるのは自然なことかもしれない。

ではなぜ、「ダメ金」という言葉は当事者の間でこれだけ定着してしまったのだろうか。

写真はイメージです(PhotoAC)
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Aさんはその背景について、「代表か代表じゃないかというわかりやすさと、結果しか見ない人が多いのではないか」とずばり見解を述べたうえで、最後にこんな言葉を紹介してくれた。

「全国大会の常連校で指導していた先生が、Xでこんな言葉を残していたんです。

『ステージは戦場ではない。戦いにいくような気持ちではなく「おかげさま」の心で』
『全国大会の金賞も、地区大会の何賞も、誠実に音楽に向き合った思い出があれば、それが一番の宝物』

この言葉、すごくいい言葉だなと思います。コンクールに携わるすべての人が長い練習期間の中でこういう気持ちで挑んでほしい。私自身、指導経験の中で金賞を取ることの大変さは痛感しています。コンクールの使い方を間違えたら、恨みつらみにしかなりません。こういう気持ちがあれば、そもそも“ダメ金”なんていう言葉を使う必要もないのではないでしょうか」

写真はイメージです(PhotoAC)
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最後に、コンクールを運営する側は「ダメ金」という言葉をどう捉えているのだろうか。

コンクールを主催する全日本吹奏楽連盟と朝日新聞社を含め、複数の都道府県吹奏楽連盟に問い合わせたものの“本部”から期日までに回答はなかった。いっぽういくつかの関東の都道府県の“支部”にも問い合わせてみると、千葉県吹奏楽連盟事務局から以下の通り回答が寄せられた。

「『ダメ金』という言葉は、吹奏楽部員の間で、金賞を受賞しながらも県代表になれなかった場合に使われているようです。当連盟としてその言葉を使用しておりませんので、コメントは控えさせていただきます」

吹奏楽が、音楽が好きだからこそ、「上の大会に行けなかった」という悔しさを込めて誰かが「ダメ金」と呼び始めたのかもしれない。だが、仲間とともにひとつの音楽をつくり上げた時間までが「ダメ」だったわけではないだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班