ワインが生まれた風景に入っていけるような仕立ての、ヴィジュアル新書
田中優子さん(以下、田中) 私、『グラスの中のイタリア』を拝読して、本当に晴れ晴れとした気持ちになる本だなっていうふうに思ったんですね。
櫻井芙紗子さん(以下、櫻井) ありがとうございます。
田中 後で現地の映像なども見せてくださるそうですが、まず、この本は写真がきれい。全部ご自身でお撮りになったんですよね? よくこれだけの写真をお撮りになれるなと思うくらいきれいな写真です。ですから、この本はワインの本ではあるんだけれども、ワインのことを学びながらイタリアの風景に入っていってしまうので、読んでいると、風景を見ながらワインを飲みたくなるっていう、そういう本ですね。
櫻井 はい、風景もそうですが、いろんな要素を見つけることができるというのがワインの魅力だと思うんですけれども、特にイタリアは地域ごとの個性が本当によくワインの中に反映されていまして、地域の数だけワインがあるといっても過言ではないくらい、多様性に満ちた世界があるんですね。ですので、その多様な中のいくつかの特筆すべきワインを厳選して、今回、1冊の本としてまとめています。
実はこの本が形になるまでに、約60名の生産者の方々にイタリア語でインタビューを行っているのですが、それをコロナのロックダウンの間にやっていたんですよ。4年くらいそれをしながら、皆様に発表する場として「イタリアワイン文化講座」というオンラインの講座を開催しました。優子さんは、その講座全30回を踏破してくださったという……。
田中 はい、踏破しました(笑)。講座では、イタリアワインってこんなに多様なのかって思うくらい、前もってワインが送られてくるんですよ。見たことがないワインばっかりでしたよね。
櫻井 今日はその講座を圧縮した短い映像もお見せしたいと思いますが、まず、私がこの本を作るにあたって優子さんからどのような影響を受けたかということを、ちょっとだけお話ししたいと思います。
今回、私の本を出していただいた「集英社新書ヴィジュアル版」というのは、新書だけれどカラー写真を豊富に収録するという非常にユニークなフォーマットになっています。その第1号が優子さんの『江戸を歩く』(写真:石山貴美子、2005年)という本で、私の『グラスの中のイタリア』は48番目です。同じシリーズの中で、またおつながりができたというのは感激で、ありがたいことだと思っています。
そして、『グラスの中のイタリア』をデザインするにあたって参考にさせていただいたのが、優子さんの『江戸百夢』(2000年、朝日新聞社)という代表作です。サントリー学芸賞も受賞されていますが、まず文章があって、その文章がとても鋭い。本当に剃刀のように。それを読ませてから、内容を体現した図版があるという、読んだ瞬間にアッと思わせるような構成の素晴らしい本なんです。
私は自分の本にも何とかそういう要素を盛り込むことができないかと思いまして、まったく逆のパターンですが、まず扉絵でシンボル的なイメージを見てもらって、その後、文章でその世界観を追いかけていくということをやってみました。














