ロシアにとっても簡単に受け入れられる案ではない
米国側には、双方に「勝利」と説明できる成果を与えて、交渉を動かす狙いがあるとみられる。
ウクライナは南部2州と原発、アゾフ海沿岸を取り戻す。ロシアは、軍事的な完全制圧を目指してきたドンバスと、戦略的要衝であるクリミアを確保する。
トランプ政権は、どちらの側も全面勝利できない戦況を踏まえ、東部と南部を交換する「大取引」で戦争を終わらせようとしている可能性がある。
だがこれは、ロシアにとっても簡単に受け入れられる案ではない。
ロシアは2022年9月、占領地で「住民投票」と称する活動を行い、ドネツク、ルハンスクだけでなく、ヘルソン、ザポリージャの両州も一方的に併合した。4州をロシア領とする手続きも取った。国連総会は、この「住民投票」を違法なものとして認めず、ロシアによる4州の一方的な併合を非難している。
それでもプーチン政権は、4州がロシアの一部になったと国民に説明してきた。ヘルソン、ザポリージャの両州を返せば、自国の領土だと宣言した土地を和平のために手放す形になる。南部の軍事拠点や陸上回廊を失うことも、ロシア軍にとって大きな痛手だ。
領土交換だけを先に決めても…
ロシアはこれまで、ウクライナ軍が4州の全域から撤退することを停戦の条件に掲げてきた。米国案は、この要求をドンバスでは満たすものの、南部2州では逆にロシア軍へ全面撤退を迫る。
プーチン氏が従来の最大限の要求を修正する用意があるかどうかが、実現できるかどうかを左右する。
両国の首脳だけで決められる問題でもない。ウクライナ憲法は、領土の変更を国民投票で決めると定める。戦時下で延期されている選挙の実施、安全保障上の環境、国外に避難した国民の投票方法など、数多くの問題を解決する必要がある。
ゼレンスキー氏が領土に関する最終判断を国民に委ねる可能性を示してきたのも、このためだ。
停戦後にロシアが再び侵攻するのをどう防ぐかも決着していない。ウクライナは、米国を含む西側諸国による法的拘束力のある安全保障を要求している。欧州諸国の部隊展開や防空支援も協議されてきたが、規模や任務、米軍の関与は固まっていない。
領土交換だけを先に決めても、停戦監視や制裁解除、住民の国籍問題を処理できなければ、持続的な和平にはならない。特に、双方の軍がいつ、どの経路で撤退し、誰が履行を監視するのかは、交渉の成否を決める。













