家族から負った傷は、他人には治せない

──お話を聞いていると、お母さまとの関係はかなり良好ですよね。一方で、小説ではもっと複雑な感情も描かれています。

母とはずっと仲よくいたいっていう気持ちがあって。「母には嫌われたくない」「私のことを好きでいてほしい」という気持ちがすごく強かったので、分かりやすく仲が悪くなることはなかったです。

ただ、以前エッセイで母について書いたときに、それまで母に対してずっと思ってたことを初めて本人にぶつけて。私が母に抱いていた気持ちって、「執着」に近いものだったと思うんですよね。それをずっと持っていると、自分自身をも窮屈にさせてしまう。

多分、父と母から同じ形、同じ量の愛情をもらってたら、今の私も全然違う人間になっていたと思います。でも、そうじゃなかった。

小説は半自伝的でありながら、家族の内実が赤裸々に綴られている
小説は半自伝的でありながら、家族の内実が赤裸々に綴られている

──小説の後半では、お母さま自身も、その母親――MINAMOさんにとっての祖母と複雑な関係にあったことが明かされます。

そこはほとんど実際の話です。私が家を出たあとぐらいに、母がおばあちゃんの話をしてくれて、そこで母が祖母と絶縁した理由を知りました。「ああ、そういうことだったんだ」って。おばあちゃんとは、小学生の頃からもうずっと会ってないです。

──この小説を手に取る人の中には、家族との関係や「毒親」というテーマを重ね、自分と似た境遇を思い出す人もいるかもしれません。この作品とどう向き合ってほしいですか。

私は自分の親のことを「毒親」とは思ってないです。この小説を読んで、「毒親」というテーマを連想する人はいるかもしれないですけど、私はそうは思ってない。

家族のことで自分が負った傷って、他人が介入したからといって治せる傷ではないと思うんですよ。だから、この本を読んで、自分がずっと見ないようにしてきた傷がある人が、少しでもその傷と向き合えるようになれば、その手助けになればいいなって思います。

「家族問題=毒親」という昨今の捉え方に疑問を投げかけるMINAMO
「家族問題=毒親」という昨今の捉え方に疑問を投げかけるMINAMO
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──他人との関係で苦労してきた人ほど、目を背けていることも多い。

多分そういう人って、もう見ないようにしてると思うんですよ。それが間違いだとは思いません。

でも、私の母とおばあちゃんは実際に縁が切れてしまっていて、一度切れてしまったら、もうどうにもできない。だから、つながっているうちは、もしできるならなんとかしてほしいなとは思います。もちろん、関係を切るという選択もある。

どちらの選択をした人にとっても、何かしら響く小説にはなっているんじゃないかなと思います。

#2に続く

取材・文/キムラ 撮影/杉山慶伍

母の泥舟
MINAMO
母の泥舟
2026年09月14日
1980円(税込)
四六判
ISBN: 9784041166895
セクシー女優の新境地。圧倒的な筆力で描ききる、半自伝的小説。
常に不機嫌な父、不安定になる母、壊れていく家庭。
“普通の家族”を求めるほど、少女は「母を救わなければ」という思いに囚われていく。
父の機嫌を読み、母を傷つけないように振る舞い、いつしか自分の人生よりも“母を幸せにすること”が生きる目的になっていた。

大人になっても心の奥には埋まらない空白が残る。
なぜ私は、母を救えないのか。
その答えを探すなかで主人公が辿り着いたのは、母にもまた「救えなかった母」がいたという事実だった――。

祖母、母、娘。
三代にわたって連鎖する愛情と支配、祈りと絶望。
近づきたいのに傷つけ合ってしまう“母と娘”という逃れられない関係を、痛みと優しさをもって描く、2026年内をもってセクシー女優引退を表明したMINAMOが、初めて挑んだ半自伝的小説。
愛されたかったすべての人へ贈る一冊。
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