“フェイク”で客を集めることの法的リスクは?
話を“晒しフォーマット”に戻そう。
前出の制作者は、作品そのものだけではなく、SNS上でどのような設定や投稿を作るかという宣伝にも関わることがあるという。
実在する一般女性の流出映像であるかのように誤認させる手法に、抵抗はないのだろうか。
「成人向け作品の世界では昔から、『元アナウンサー』『元保育士』など、男性の興味を引くような肩書きを作品上の設定として使うことがありました。テレビ番組などを連想させるパロディ作品もたくさんあります。
たとえばNHKの『チコちゃんに叱られる!』を連想させるタイトルの『チコツちゃんにシコられる!』という作品もありました。そういう“設定”や“パロディ”に慣れている業界なので、制作側には抵抗感が薄い人もいると思います」
しかし、作品内の設定や明らかなパロディと、実在するニュースサイトや一般女性を利用して「事実」であるかのように装うことは同じなのだろうか。
法的な問題はないのか。大阪グラディアトル法律事務所の黒木佐紀弁護士に聞いた。
「実在するニュースサイトの記事や写真、ロゴなどを無断で利用した場合には、著作権侵害や、使用の仕方によっては商標権侵害などが問題となる可能性があります。
また、実在する女性の写真を無断で使い、その女性について『AVに出演していた』などという虚偽の情報を流せば、名誉毀損などが成立する可能性があります」
一方、そうした投稿を見て成人向け動画を視聴したユーザー側はどうなのか。
「適法に配信されている成人向け動画を単に視聴しただけで、通常、視聴者側が罪に問われるものではありません。
一方で、虚偽の情報を流したり、嘘の噂を広めたりすることで店の営業や企業の業務を妨害すれば、信用毀損罪や偽計業務妨害罪などが成立する可能性があります。そのほか、内容によっては名誉毀損や著作権侵害などが問題になることもあります」
では、“フェイク情報でバズらせて成人向け作品を売る”という行為そのものを禁止する法律はあるのか。
「フェイク情報を使った集客行為それ自体を一律に処罰する、専用の刑罰法規があるわけではありません。ただし、だから何をしても許されるということではなく、使用した情報や画像、誘導の方法によっては既存の法律に触れる可能性があります」
作品の内容ではなく、あたかも「実在する女性の秘密が暴かれた」と思わせる物語そのものを商品への入口にする“晒しフォーマット”。大きな売り上げを生み得るSNSマーケティングの裏側で、どこまでが演出で、どこからが許されない“フェイク”なのか。いま、成人向けコンテンツを作る側のモラルも問われている。
文/河合桃子













