なぜ教育現場は「なかったこと」にするのか

斉藤 学校内で性暴力事件が起こった際、対応に苦慮する学校関係者は少なくありません。たとえば、一部の生徒同士の盗撮やスカートめくり、すれ違いざまのボディタッチ、着替えののぞき見などは、大人から「悪ふざけの延長」とみなされやすい。

末冨 当然ながら同意のない性的接触は、たとえ周囲が「いたずら」と呼ぼうが、すべて性暴力ですね。

斉藤 しかし、こうした刑事事件化しにくい事案では、学校側は適切な対処法がわからず、性暴力の事実がうやむやにされ、放置されてしまうんです。実は学校現場では、そのような「グレーゾーン」ともいうべきケースが非常に多く、私のもとにも現場の教員や養護教諭からの相談が相次いでいます。

末冨 これは被害者にとっても加害者にとっても、深刻な問題です。

斉藤 加害者臨床の観点からいえば、加害行為が「なかったこと」にされるので、加害少年は「この程度で済んだ」という負の成功体験を積み重ねてしまう。

末冨 そうなると、何が悪いかわからないまま性加害を繰り返す可能性もありますね。

斉藤 生徒間の性暴力の場合、加害者の親が認めないケースも非常に多いです。「ウチの子がそんなことをするはずはない」「校長の管理不足だ」などと学校の責任を追及したり、被害者の落ち度をあげつらったりする。その結果、被害者が二次被害を受ける事案もあります。

末冨 結局、一番苦しいのは被害者ですね。

斉藤 ごく稀なケースとして、校内で生徒の盗撮行為が発覚したある事案では、校長の裁量により、養護教諭やスクールカウンセラーなどが被害児童をケアしていました。そして、加害児童には専門の医療機関でプログラムを受けさせ、通院した日は出席扱いにする……といった選択を取る学校もありました。

いずれにせよ、校長によって対応にバラつきが生まれる、「学校ガチャ」「校長ガチャ」の現状には変わりありません。

写真はイメージです
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