通報を怠った教員はDBSリストに

末冨 イギリスでは、これまで10年以上かけて「セーフガーディング(安全保護)」を改善し続けてきました。大人から子どもへの性暴力や不適切指導、虐待だけでなく、子ども同士の暴力行為、盗撮などの性暴力、誹謗中傷、差別発言、過激主義、SNSトラブルなど、あらゆる問題に対応する仕組みです。学校・園をはじめ子どもに関わる現場の他、医療機関や高齢者施設・障害者施設でも「セーフガーディング」は導入されています。イギリスの学校には、教職員で構成する「セーフガーディングチーム」があり、子どもたちがすぐに相談できるよう、メンバーの顔写真や連絡先などが張り出されています。

斉藤 誰に相談すればいいか、ひと目でわかるのですね。

末冨 女子だけでなく男子が性被害に遭ったときでも対応しやすいよう、セーフガーディングチームは男女混合で構成されています。LGBTsの教職員もチームのメンバーとなっている学校もあります。

セーフガーディングチームを率いるのが、政府認定資格を持つ「安全保護主任(Designated Safeguarding Lead:通称DSL)」です。このDSLが相談窓口となり、事案の初期対応や自治体や警察への通報を担います。

先ほど、日本では事案が起きた際、学校の対応にバラつきがあるという話がありましたが、イギリスでは事案が起きた場合、学校内で処理するのではなく、即座に基礎自治体(最小単位の行政区画)や警察に通報することが義務づけられています。

斉藤 通報する期限も決まっているのでしょうか?

末冨 たとえば、自分が教員で、誰もいない教室で同僚が許可なく児童と2人きりになっている場面を見かけたとします。このような不適切な場面を目撃した場合、安全保護主任に24時間以内に通報しなければ、「隠蔽への加担」とみなされ、隠蔽した教員や、隠蔽に関わった職員全員の名前がDBSリストに記録されます。

また、学校内での隠蔽を防ぐためにも、セーフガーディングチームだけでなく、基礎自治体、イギリス教育省、全英児童虐待防止協会(NSPCC)など、複数の外部の相談・通報窓口が子どもや保護者にも周知されています。