「ヤンヨンヒ作品はどんどんスケールが大きくなっている」
――本書の刊行後、石丸さんの方にはどのような反響がありましたか。
石丸 在日の方からの感想で一番多かったのは、読み進めるのが辛かったけれど、帰国した同胞がどんな暮らしをしたのか知れてよかったというものでした。多くの方に感謝と労いの言葉を頂いたのが何より嬉しかったです。
北朝鮮で帰国者がどんな暮らしをしていたのか、情報は断片的でデータもないから、在日の皆さんにしても、苦難があっただろうとは考えられても、具体的な想像ができなかった。
梁石日さんの小説『血と骨』なんかの文学作品や映画でも、登場人物が帰国船に乗るまでは描けても、帰国後のことは欠落しています。材料がないから仕方がないですよね。僕はそれを埋めたかったわけです。
ヤン せめて事実は知りたいし知らせたい。先ほど、石丸さんは、朝鮮総連の責任を問うよりも、当時の日本政府の態度を追究しなければならないと仰いました。
朝鮮人である私は、朝鮮総連の態度や北朝鮮政府の目論見について追及する必要があります。己側の過去を忖度なくクリティカルに分析し語っていかないと、歴史も現在も未来も見えません。無責任な美辞麗句でどれほどの同胞の人生を犠牲にしたか。謙虚に振り返るべきです。
石丸 ヤン監督は朝鮮大学校を出て、そこからまず小さな境界を越えて日本のメディアの世界で仕事を始め、それからどんどん大股で越境を重ねていきます。ヤンヨンヒ作品は発表する度にどんどんスケールが大きくなっている。人生をかけて取り組んでいて、表現が生半可な覚悟でないのがわかるから、僕もすごく刺激を受けてきました。
『かぞくのくに』の中で、主人公のリエ、つまりヤンヨンヒ自身が北朝鮮から来た監視員に向かって吐いた「あんたもあんたの国も大っ嫌い」という台詞にはのけ反りましたね。
これはヤン監督にしかできない表現です。映像では、ヤン監督の「ディア ピョンヤン」を超えるものは絶対に撮れない。帰国者を描くのであれば、ファクトを重ねた強い証拠力でノンフィクションを書こうと考えてきました。
ヤン とんでもない。この本がより多くの人に読まれることを願っています。
構成/木村元彦















