AIによって市場は、人間以上に非合理的になるかもしれないワケ

これまで市場には「意思」があった。強欲もあった。恐怖もあった。欲望もあった。疑心暗鬼もあった。バブルとは、人間の欲望が作るものだった。暴落とは、人間の恐怖が連鎖するものだった。

ところがAIには欲望がない。恐怖もない。家族もいなければ老後もない。含み損を抱えて眠れなくなることもない。あるのは計算だけである。

ならば市場は合理的になるのか。私は、むしろ逆の可能性を考えている。AIによって市場は、人間以上に非合理的になるかもしれない。

今後、市場は、AIによって人間以上に非合理的になる?
今後、市場は、AIによって人間以上に非合理的になる?

なぜなら、同じ情報を、似たモデルが、似た速度で解析し、似た結論へ到達した瞬間、世界中の資金が一方向へ走る可能性があるからだ。

人間なら迷う。「本当に売っていいのか」「少し様子を見よう」「ここまで下がれば安いのではないか」。この迷いこそが、実は市場のクッションになってきた。

しかし、人口知能には躊躇がない。条件が成立すれば売る。別の条件が成立すればさらに売る。ボラティリティが上昇すればリスク量を落とし、価格が下がれば別のモデルが反応し、それを見た別のAIがさらにポジションを変える。

そこで起きるのは、恐怖の連鎖ではない。計算の連鎖である。

「意思なき相場」の恐ろしさ

私はこれを「意思なき相場」と呼びたい。そして、この市場は恐ろしい。

人間がパニックを起こしているなら、中央銀行総裁や財務大臣が記者会見を開き、「市場は冷静さを取り戻してほしい」と呼びかける意味もある。しかしAIに「冷静になってください」と言って何の意味があるのか。

AIは最初から冷静なのである。冷静なまま、売る。冷静なまま、損切りする。冷静なまま、他のAIの行動を読み、さらに先回りする。

これまで市場で最も恐ろしい存在は、理性を失った人間だった。これから最も恐ろしい存在は、理性しか持たない人口知能になるかもしれない。

しかも、もう一つ大きな問題がある。AIが進化すればするほど、投資家の情報格差はなくなると思われがちだが、私は逆だと思っている。情報格差はなくならない。情報処理能力の格差へ姿を変えるだけである。

昔は、機関投資家しか持っていない情報があった。ブルームバーグ端末を持つ者と新聞しか読めない者では、明らかな差があった。

しかしインターネットによって情報そのものは民主化された。決算書も読める。海外ニュースも読める。企業の説明会も動画で見ることができる。