恐怖で失神したまま操縦桿を渾身の力で握り続けて…
おそらく、訓練生は飛行中にパニック状態に陥ったのではないでしょうか。訓練生が座っていた前の席と、指導教官が座っていたうしろの席は、操縦桿が連結しており、動きが連動する構造になっています。そして恐ろしいことに力の強いほうが勝つ(優先される)構造なのです。
訓練生がパニックになって操縦を誤っても、教官が操縦桿を押し戻せば、墜落にはいたらなかったはずです。
けれども、最後まで訓練生の手が操縦桿を握っていたということは、恐怖で失神したまま操縦桿を渾身の力で握り続けてしまい、教官がそれを押し戻すことができずに墜落した、と考えるべきでしょう。
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車であれば、ブレーキをかければ止まりますが、空中を飛ぶ飛行機は停止できません。また、超軽量飛行機は軽量化のために、自動操縦などの安全装置をつけていないため、操縦によって空中で体勢を立て直すしかないのです。
この航空事故は極端なケースかもしれませんが、死後硬直が続いている限り、筋肉は緊張してこわばり、なにかを握っているのであれば、そのままの状態が続きます。
ただ、死後数日が過ぎて硬直が解けると、固く握りしめていた手のひらもほどけていくと考えていいでしょう。このケースでは冷たい海水により硬直が保たれていたと考えられます。
文/飯野守男 写真/shutterstock
2026/5/26
1,870円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4868010579
「交通事故よりお風呂が危ない」
ドラマ監修も務める法医解剖医が教える
あっ! と驚く死体の話
解剖料は1回〇万円、医療ミスを暴いた解剖例など、
知られざる法医解剖医の仕事から、
「舌を噛んで自殺はあり得るのか?」
「刺されたらナイフは抜くべきか?」といった
ドラマやマンガで目にする描写のウソ・ホントまで。
法医学者だから知っている実際の解剖事例をもとに、思わず人に話したくなる
死体のリアルな知識がつまった1冊です!
■内容
第1章 解剖室へようこそ ――死体はこうして切り開かれる
死体はどのように解剖されていくのか
死体の「解剖料」はどこから、いくら払われるのか?
解剖が最も大変なのは「めった刺し」事件
刃物をもった人間に襲われたら「胸」と「首」を守れ
やわらかい臓器、固い臓器
高温多湿の日本でミイラ死体はできるのか
口の中にウジがびっしり詰まった腐敗死体
法医解剖医の解剖器具リスト
第2章 解剖しないとわからない 「死因」のケーススタディ
Case1「入れ歯で死ぬ」
Case2「風呂で死ぬ」
Case3「3食フライドポテトで死ぬ」
Case4「誤飲で死ぬ」
Case5「便秘で死ぬ」
Case6「病院嫌いで死ぬ」
Case7「鍼で死ぬ」
Case8「夫婦で死ぬ」
Case9「溶けて死ぬ」
Case10「山で死ぬ」
第3章 ドラマや漫画で描かれる「死体」の嘘
Q.「喉笛を掻っ切る」と本当に血が勢いよく吹き出るのか?
Q.舌を噛み切っての自殺は本当にできる?
Q.死体から目玉をくり抜けるか?
Q.「肺に穴が開いて、少しずつ窒息死するのが最も苦しい死に方」は本当?
Q.ナイフで刺された! すぐに抜くべき?
Q.銃で撃たれた! でも弾が貫通していれば、死ぬ可能性は低い?
Q.死体を隠すには、コンクリート詰めがいい?
Q.「重要な手がかりを握ったまま死んでいる」死体は実在するか?
Q.雷が落ちると、丸焦げになって死ぬ?
第4章 死体と向き合うことで見えてくる世界
『アンナチュラル』にハマって法医学を専攻、テレビ局に入社した卒業生
「死体は得意ですか?」「いいえ、苦手です」
医学部生だって解剖で倒れる
疑い深い人間ほど、法医学者に向いている
解剖は『答え合わせ』ができる
最短ルートで教授になりたい人は法医学が穴場?
死体の数が「解剖格差」に直結している日本
嬰児殺が多いインドネシアの法医学事情
死んだ肉体はどのように腐っていくのか
死体の腕を切る、人工呼吸器を外す、とことん合理的なオーストラリア
法医学者に完全犯罪は可能か?