カツオやシャチホコが被害に…
茶わんの作者である石川光一さんの家族は集英社オンラインの取材に「おじいちゃんもお父さんも(金細工の)職人で、うちの人は3代目です。本人は、今回のことで名前が出て困ったと言っていました。でも犯人が捕まってよかったです。
損害については、うちはもう(作品を)お店に納めちゃってるんでありませんが、でも困りますね、ほんとに…」と困惑した様子で話してくれた。
金の工芸品は派手な宣伝が付きもののため人の目を引き、過去にも窃盗のターゲットになってきた。一番有名な事件といえば1993年に高知市で発生した「純金カツオ盗難事件」だ。
政治部の元記者が解説する。
「バブル末期の1988年に当時の竹下登内閣が地域活性化を目的に、全国約3300の市町村に使い道が自由の1億円をばらまく“ふるさと創生事業”というのをやったことがあります。人口がバラバラの自治体に一律の額を配る世紀の愚行と言われ、人寄せパンダのようなばかばかしい事業に多くの自治体がカネを突っ込みました。
そのひとつがカツオの一本釣りで有名な高知県中土佐町。全長58センチ、総重量52キロ超の金のカツオ像をつくったんです。その後、県に所有が移った後の93年、展示されていた高知県立坂本龍馬記念館から盗まれたんです」
事件は大きく報じられ、高知県警は必死の捜査を行なった。
「当時、犯人が捕まらない中で焦る県警の捜査員に、ある記者が冗談で『カツオはもうバラバラのタタキにされているかもしれないですね』と言ったら『ふざけちゅうがか(ふざけてんのか)!』と怒鳴られていました(笑)。
ところが1994年になって、奈良県で別の窃盗で捕まった犯人が純金カツオ像も盗んだと供述。なんと、カツオは神戸の貿易商を通じ800万円で売り払われ、すでに溶かされていました。このときもかなり買いたたかれていたんですね」(当時を知る元社会部記者)
また、太閤記の出世物語で知られる岐阜県旧墨俣町(現大垣市)もふるさと創生資金で金のシャチホコをつくったが盗まれた。「2002年に展示していた歴史資料館から盗まれていきました。町はさらに2代目シャチホコもつくったのですが、2006年にまた泥棒が入って今度は腹ビレなどをもぎ取られていきました」(前出・社会部記者)