「掃除機の音がうるさい」「ドアの開け閉めの音がうるさい」
救急隊員や警察が来て、ようやくAさんは手当を受けることができた。
「救急隊員の方に包帯を巻くから座ってくださいと言われ、Aさんはそれでようやく腰を下ろしました。救急隊員に氷を入れたビニール袋を渡され、指示通りにそれに耳を入れました。Aさんは警察にも気丈に対応し、『最初は“うるさい!”とドアを叩かれたりして、台所の窓ガラスを割られたんです。
それで驚いて思わずドアを開けたら隣の人が入ってきて殴られ、蹴られて、殺されると思って体を捻って後ろを向いた時に耳を切られた』と警察に伝えていました」
Aさんと竹林容疑者の間の騒音トラブルとは、どのようなものだったのだろう。前出の女性が再び経緯を説明してくれた。
「Aさんは50年以上ご家族と一緒に、ここで生活していました。今はお子さんも出ていかれて1人で住んでいましたが、『ずっと家にいるより働いていたほうがいいわね』と販売の仕事をされていました。騒音についても聞いてはいます。Aさんは夏に玄関のドアを開けっぱなしにする習慣があって、朝5時30分に起床して玄関のドアを開ける際の『ガチャン』という音が気になる方もいたようです」
3~4年ほど前に引っ越してきた竹林容疑者も、入居半年後ぐらいに『ドアの音がうるさい』とAさんに文句を言いにきたことがあったそうだ。
「Aさんもそれ以降はなるべく物音を立てずに生活するように気をつけていたそうですが、その後も『掃除機の音がうるさい』『ドアの開け閉めの音がうるさい』と怒鳴りこまれたそうです。私が聞いてるだけでも4、5回はあって、最後は10月ごろにも怒鳴りこまれています。夜中の2時半に『うるさいっ』と怒鳴りこんできたこともあると聞いています。彼はAさん宅だけでなく、反対側の隣の家にも『うるさい』と怒鳴り込んでいたようです」
近年は騒音トラブルを発端にさまざまな事件が全国各地で頻発しているが、因果関係が本当にあるかどうかなどの検証は行われていない。前出の知人女性も、こう心情を明らかにした。
「警察に相談もせず自分で対処しようとしたAさんの優しさがアダになしまったと思っています。
事件後、Aさんのお子さんからお電話をいただきましたが、まだAさんとはお話できていません。切り取られた左耳については医者から繋ぎ合わせるのは80%の確率でダメだろうと言われていると聞いており、本当に気の毒でなりません」