・IQ50~69……軽度
多くの場合、身のまわりのことは自分でできるようになります。自分で考える力も身につき、小学6年生くらいまでの学力を習得できます。簡単な読み書きや計算ができます。ただし、言葉の発達や抽象的なことの理解に遅れが生じる傾向があります。
高度なスキルを求められなければ、仕事に就くこともできるでしょう。一般的に知的障害といっても、本人や周囲の人にも「知的障害」という自覚がなく、普通に生活しているケースもあります。そのため、実際の人数よりも認定数が少ないものと考えられます。
また統計上は、知的障害者の約85%がこの段階に分類されます。ですので、知的障害といえば、概して軽度のことを指すといっても過言ではないでしょう。
ところで、かつて知的障害のイメージというのを学生に聞いたことがありますが、次のような回答が返ってきました。
•怖い
•いつも何かブツブツ言ってる
•話が通じない
•テストがいつもビリ
•小さい子どものまま
•授業を邪魔して迷惑
•一生支える覚悟がいる、そんな子をもつと大変
•きょうだいがかわいそう
•純粋無垢
これらは、実際の軽度知的障害の特徴と比較してみれば、ほとんどが異なることがわかります。いかに世間での知的障害のイメージが実際と違うかを実感しました。
・IQ35~49……中等度
身のまわりのことはだいたい自分でできるようになりますが、一定のサポートは必要なことが多いでしょう。簡単な読み書きや計算が部分的に可能です。乳幼児期に言葉の遅れはありますが、コミュニケーション能力はあります。適切な支援を受ければ、小学2年生くらいまでの学力を習得できます。配慮があれば、単純作業の仕事に就くこともできるでしょう。
・IQ20~34……重度
乳幼児期はほとんど会話をしませんが、学童期になると、基本的な生活習慣(会話、食事、排せつなど)を身につけることができます。学力の習得目安は5歳くらいまでで、読み書きや計算は難しいでしょう。簡単なお手伝いやおつかいといった作業は可能です。
・IQ20未満……最重度
快・不快を表出するくらいで、言葉でのコミュニケーションを身につけることは難しいでしょう。適切な支援によって能力の成長は見られますが(3歳くらいまで)、身のまわりのことを自分で処理することは難しく、常に周囲からの支援や保護が必要となります。
なお、知的障害の男女比はおよそ1.6:1(軽度)~1.2:1(重度)で、全体での男女比は1.5:1程度とされます。
ここまで、知的障害の程度区分の4段階について解説してきましたが、ここで誤解されやすいことがあります。それは、
「障害程度が低い」=支援の必要性も低い?
ということです。確かに身のまわりの世話などで手を貸す場面は、中等度や重度よりも軽度のほうが減るかもしれませんが、それでも支援をしなくていいわけではありません。むしろ軽度知的障害者だと健常者と見分けがつかず、支援されない可能性すらあります。そうなると、生きづらさは増していきます。
「やっぱ無理!」が口癖の男児に判明した”軽度知的障害”の診断…発達障害の影に隠れてしまう子どものハンディをみわける3つのポイント
「普通」の子に見えるのに、「普通」ができない…。軽度知的障害者にも当てはまる場合もあるが、もしかしたらそれは「境界知能」なのかもしれない。知的障害とはどう違うのか。『境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ』 (SB新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『境界知能の子どもたち』#1
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「やっぱり無理」が口グセのAくん
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