被害者の父親は「正直に言うと『ぶっ殺したい』」

強制捜査を視野に入れての証拠隠滅が目的なのか、純粋に「趣味動画」を押収されて二度と見られなくなることを恐れたのかは不明だ。

さらに、M(キッド)はこんな書き込みを残していた

〈まだ(グループを)廃止するつもりはありません〉

MとSNS仲間のメッセージのやりとり(知人提供)
MとSNS仲間のメッセージのやりとり(知人提供)

しかし、Mの願いもむなしく、SNS上の仲間たちの多くはMを心配しつつも「すみませんが怖いので一旦退出させてもらいます」「大変な事態になってますけど大丈夫でしょうか? 場合によっては全消しで解散でも構いません」などとクモの子を散らすようにグループから離脱。

結局は、事実確認に動いた四谷大塚から相談を受けた警視庁が、同日中にMから任意提出を受ける形でこのハードディスクを押収した模様だ。

Mの歪んだ欲望で恐怖のどん底に突き落とされた、児童の保護者たちの怒りは収まらない。Mが盗撮の標的にしたのは#1で報じたAさんだけではなく、わかっているだけで二桁は下らない。やはり教室の床に体育座りをさせられ、執拗に盗撮されていたBさんの父親Cさんは、深い怒りをにじませながらも、塾側に建設的な改善策を求めた。

取材班が情報提供した動画を確認したCさんは、記者とともに10日、四谷大塚のMの勤務先の校舎に向かい、対応に当たった同塾の教育事業部本部長と校舎長の謝罪の言葉をさえぎるように、こう切り出した。

「正直に言うと『ぶっ殺したい』ってのが本音ですけどね。けど、娘はこの塾が好きなんですよ。校舎長のことは家でも『いい先生だ』ってよく話しているし、何度か面談した私もそう思ってる。だからクレームをつけにきたわけじゃない。私にとって大事なのは四谷大塚が今後どうしていくのか、そういう話をしたい。この事態を受けてどう変わるのか教えてほしい」

これを受けて校舎長は「本部と協議中ですが」としたうえで、教室内に防犯カメラを設置し、講師には授業中にスマートフォンを教室に持ち込ませないようことなどを検討していると説明し、Mの処遇についてはこう明言した。

「M本人からの聞き取りで、住所を流出させた方、動画や画像を流出させた方など、あわせて被害者が11名いて、やったことについても認めました。なので、会社としては懲戒解雇とする旨を伝え、本人も納得して念書を書いております。ここから先のMのことに関しては警察に任せることになっています」

警察に同行を求められたM(撮影/集英社オンライン)
警察に同行を求められたM(撮影/集英社オンライン)

Cさんは懲戒解雇を即時に決めた四谷大塚の対応に安堵の表情を浮かべながら、こう質した。

「懲戒解雇ですね? つまりMはもう二度と塾の講師はやれないと考えていいわけですね。彼はまだ若いと思うので他のことでいくらでもやり直したらいいとして、ひとまず他の塾にも立てないということには安心しました。それから先ほどの話に戻りますが、防犯カメラとか講師にスマホを持たせないとかそういう話ではないと思うんですよ。そこまでやるとこのご時世そっちが問題になったりもするでしょう。個人情報についてのアクセス権限はどうなっていますか?」