完成から2周年の「夢のコート」

『フィールド・オブ・ドリームス』という米国映画があった。ケビン・コスナー扮する主人公が、亡き父から受け継いだトウモロコシ畑で聞いた謎の声に従って、畑をつぶして野球場につくりかえる物語だ。

この映画さながら、亡き父から相続したブドウ畑をバスケットボールのコートに変えたのは、名古屋を拠点に活躍するラジオパーソナリティーの小林拓一郎さん(42)。通称「コバタク」のバスケット版“フィールド・オブ・ドリームス”だ。

日本三大稲荷の豊川稲荷から車で約10分。人口18万人ちょっとの地方都市の田園風景の一画に、米プロバスケットボールNBAの名選手コービー・ブライアントが壁に描かれたカフェがある。愛知県東部の豊川市にある「グレープパークコート」。

亡き父のブドウ畑をバスケットコートに。DJコバタクの「フィールド・オブ・ドリームス」_1

カフェの外にバスケットボールコートが1面あり、地表はかつてここが約2200平方メートルのブドウ畑だったことを伝える薄い紫色に塗られている。午前9時から午後7時まで、カフェの開店時間はだれでも無料でコートを使える。今年8月23 日で完成から丸2年になる。

亡き父のブドウ畑をバスケットコートに。DJコバタクの「フィールド・オブ・ドリームス」_2

「オープンからずっとコロナ禍。学校は部活ができないから、バスケ部の生徒が来るのかなと思っていたら、意外と違う部の子がけっこう来ていて。『体を動かしたくて!』って感謝されました」

これは「バスケットのうまい人たちだけの場所にしたくない」と考えていたコバタクさんには、うれしい出来事だった。

「たとえば、初めてバスケットをやろうとしてゴールのある公園に行くと、うまい人たちが占拠していたりする。ずっと俺たちがここでやってんだと変なローカルルールをつくって、パブリック(公共)な場所なのにパブリックの体を成していない。

その点、グレパーはプライベートな場所だからこそ、僕がルールをつくってパブリックにできる。上手い子同士でゲームをやっていいけど、試合後は絶対に、30分間、開放してねとしています」

イベントは農作物のマーケットやバランスボール教室、ミュージシャンを呼んでのライブなどバスケットじゃないものが中心。色々な人が来て、自然とバスケットに触れられる環境を目指している。

総工費は約6000万円。Bリーグや東京オリンピックの会場を盛り上げ、バスケット界でも活躍するDJは、「バスケットは自分を変えてくれた大事なスポーツなんで、恩返しをしたい」とコートつくった。