低運賃でコスパよく移動したいときにおすすめの高速バス。車内で長時間拘束されることによる肉体的、心理的疲労はあるものの、根強い人気を誇るメジャーな交通手段だ。そして近年では従来の固定観念をくつがえすようなクオリティの高いバスが続々登場している。
今回は、ブログやサイトなどを通じて、高速バスの魅力を発信しているのりものライターの須田浩司氏にインタビュー。これまで乗車回数1300回越えを記録し、「夜行路線バスの全路線制覇」を掲げる生粋の高速、夜行バスマニアである須田氏に、設備、サービスが充実していてコスパ抜群のおすすめの高速バスを紹介していただいた。
ジャニオタも遠征でフル活用の最新高速バス。「安いけどツライ」はもはや時代遅れ?
高速バス、夜行バスと言えば、「安いけど移動中はつらくて疲れる」というイメージをお持ちの方も多いだろう。しかし、近年では価格はリーズナブルながら、設備やサービスが充実しているバスも少なくない。のりものライターの須田浩司氏に現在の高速バス事情を伺った。
東京~大阪間の運賃が新幹線の約4分の1? コスパ最強な「グラン昼特急号」
まず須田氏が紹介してくれたのは、JRバス関東、西日本JRバスで運行している「グラン昼特急号」だ。

(提供/ジェイアールバス関東)
「『グラン昼特急号』は、東京~京都・大阪間を約8時間かけて走る昼用の長距離高速バス。外国製の2階建てで2階席は3列独立クレイドシート、1階席は4列シートという2クラス制となっています。2階全席、1階席の女性専用席には、通路と座席を仕切るカーテンがあり、設備が充実しています」(須田氏、以下同)
須田氏いわく、このバスの最大のウリは運賃の安さ。

(提供/ジェイアールバス関東)
「東海道新幹線『のぞみ』と比較すると、『グラン昼特急号』の移動時間は3倍以上にも及ぶものの、運賃はだいぶ安め。『のぞみ』の東京~新大阪間の運賃は、普通車自由席で1万3870円ですが、『グラン昼特急号』の場合、最安値で2階席が3分の1以下の4000円前後、1階席が4分の1以下の運賃の3000円前後と格安なんです。また休憩が3回設けられており、時間が20~30分と長めなので、休憩場所でゆっくりと買い物をしたり、軽食を摂ったりすることができます。そして、絶景スポットも頻繁に通るため、のんびりと景色を楽しみながらコスパ良く旅をしたい人におすすめのバスと言えるでしょう」
他のお客に寝顔を見られない? 快適な移動が実現する「リラックス」
次に須田氏が紹介するのはWILLER EXPRESS(以下、ウィラーエクスプレス)が運行する「Relax(リラックス)」というシート。

(提供/WILLER EXPRESS)
「“ピンクの高速バス”としてお馴染みのウィラーエクスプレスの『Relax(リラックス)』は、全席にカノピー(寝顔が隠せるフード)が付いている4列シートのバス。寝顔を見られずにリラックスできることから、主に女性からの人気が高いです。シートピッチも高速バスにしては広めで、背もたれ・座面・腰の3つパーツで厚みや柔らかさの違うクッションを採用しており、全席にヘッドレストやレッグレストを完備した心地よい空間となっています」
また、シートを数回リニューアルしており、最新のリニューアルでは隣り合う2席の間に設置した仕切り板が顔の高さまで大幅に上げられているため、プライベート感を確保するとともに周囲との接触を減らすことができ、一定のコロナ対策にもなっているそうだ。

(提供/WILLER EXPRESS)
運賃は安い時期で、東京~大阪間の基本料金が4000円台とお手頃価格。須田氏も「安さを重視しつつも、それなりに快適に移動したい人にぴったり」と太鼓判を押す。
「安かろう悪かろう」とはならない、東北に行くなら「MEX八戸」「MEX青森」
続いては、岩手県北自動車南部支社が運行している首都圏~八戸・青森便の「MEX八戸」「MEX青森」をご紹介。

(提供/岩手県北自動車 南部支社)
「このふたつのバスは、首都圏と青森県の八戸市、弘前市、青森市を結ぶ夜行バス。車両前方が4列ワイドシートで4000円台、後方が3列独立シートで最安5000円台と東北便にしてはかなりの安さを誇っています」
東北への夜行バスだと破格の安さだが、須田氏によると、このバスの強みは決してリーズナブルさだけではないとのこと。

(提供/岩手県北自動車 南部支社)
「3列独立シートの座席は、前後左右を仕切ることができる個別カーテンを装備しており、4列ワイドシートのほうも、プライバシーカーテン、プライバシーシェードを装備するなど設備が充実。シックな色合いの腰当てのクッションや可動式の枕もつき、見た目的に高級感があるのも高評価です。さらにフットレストやレッグレストも搭載されているなど、至れり尽くせりの設備なんです」
高級感漂う、極上のプライベート空間が広がる「ReBorn(リボーン)」
「Relax(リラックス)」と同じく、ウィラーエクスプレスが運行する「ReBorn(リボーン)」もおすすめ。

(提供/WILLER EXPRESS)
「ウィラーエクスプレスが誇る現在のフラッグシップ的な高速バスです。2+1配列の全18席で、シートは周囲が気にならない全席シェル型。座席の前後も広くなっており、気兼ねなくリクライニングできます」
高級感がある見た目で乗り心地も最高そうだが、その分運賃は値が張るのでは……。

(提供/WILLER EXPRESS)
「“高級高速バス”と銘打たれているので、東京~大阪間を夜行便で乗車しようとすると、運賃は1万円~になります。ただ、早く予約すれば安くなる予約順割や、ウィラーのプレミア会員(有料)になると、毎月開催する会員限定シークレットセールで安く乗車することも可能です」
「水曜どうでしょう」でもお馴染み、実は超快適設備な「はかた号」
最後に紹介してくれたのは、『水曜どうでしょう』でもお馴染みの西日本鉄道の「はかた号」だ。

(提供/西日本鉄道)
「“キング・オブ・深夜バス”として有名な『はかた号』は、東京新宿~北九州福岡を結び、その運行距離は1000km超。名実ともに日本最長クラスの長距離高速バスです。
現在の『はかた号』は、人気の個室型プレミアムシートと3列独立ビジネスシートに分かれていますが、安さと快適さ双方を兼ね備えた3列独立ビジネスシートにも注目です。高級感のある本革&モケットシート採用で、座り心地も抜群。リクライニングも深く倒れ、プライベートカーテンもあって快適に過ごせます。時期によりますが、WEB予約で片道最安9000円から利用可能。ただし、人気のあるバスです。乗車2か月前から予約できるので、早めにチェックしておきたいですね」

(提供/須田浩司氏)
ちなみに今回紹介してもらった5つのバスは、クラスによるものの、基本的には各シートにUSBポートかモバイル充電用のコンセントが完備されている。長旅でもスマホのバッテリー切れの心配がないのも、うれしいポイントだ。
ジャニーズオタクも愛用? 宿代わりや軍資金確保のためにちょうどいい
須田氏が紹介してくれたバスは、どれも設備やサービスが優れており、かつ移動距離などを考えると、コスパがいいものばかり。
そこで近年ではアイドル、アーティストの地方公演に移動する交通手段として高速バスを利用する人もいるようだ。ジャニーズアイドルを愛し、頻繁にコンサートに通っていたというライターA氏もそのひとりだ。
「時間の融通が効く学生時代は、交通費にお金をかけるよりなら、できるだけ多くの公演に行きたかったこともあり、特に重宝していました。コンサートは週末に行われることが多いので、金曜日の夜に出発し、土曜日の公演に参加するとなると、高速バスに乗って朝まで宿替わりに利用したほうが効率的。バスによっては利用者専用のラウンジやパウダールームがあって、そこで着替えやメイクができるのでホテルのチェックインや開場前に準備を済ませておくこともできるんです。
腰が痛くならないフルフラットなどシートや個室のようになっているシートがお気に入りでした。なにより、浮いたお金を次のライブの軍資金にできるのが最高にありがたいですね(笑)」
高速バスはいまや「安くて快適」の時代に突入。今夏、旅行を計画している人は、移動手段のひとつとして高速バスを選択肢に入れてみてはどうだろうか。浮いたお金で旅行が少し贅沢になるかもしれない。
※情報はすべて7月25日時点のものです。
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