近年オープンに語られるようになった生理に比べると、まだまだ正しく知る機会が限られているのが、「更年期」の話題です。女性の特有の健康問題であるものの、パートナーや職場の同僚など男性の理解も必要なテーマです。しかしときに「あのオバサン、更年期だから」と女性蔑視とも取れる発言すら見受けられることもありますし、まだまだ性をタブー視する風潮は根強く残っています。
しかし人生100年時代、更年期を迎えてからのほうが長いものです。50歳で閉経をするとして、人生は残り35年。さらに100歳まで生きるとしたら、50年も卵巣の機能が止まり、女性ホルモンの分泌量が激減した身体の状態で生きていかなければならないのです。

女医が教える 「泥沼のような更年期障害」を乗り越えた3つの方法
誰しも避けられないものの、いまだネガティブなイメージがつきまとう更年期の話題。中高年からの心と体の変化をどう受け入れるのか。富永ペインクリニック院長の富永喜代氏による新刊『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)より一部抜粋・再構成してお届けします。
人生100年時代を謳歌する秘訣とは
閉経がいつ来るかは自分ではわからない
ここではまず閉経のメカニズムをお伝えします。最後に月経があってから、1年間、月経がないことを閉経といいます。 つまり 「あれ、この1年間ずっと生理がない。ああ、私は閉経したのね」とあとになってわかるものです。残念ながら、自分の閉経がいつ訪れるかを事前に知る方法はありません。
閉経が近づくと、月経周期が乱れてきたり、月経があっても無排卵月経が増えたりします。そして徐々に月経回数が減り、完全に停止します。
閉経を挟んで、前後5年、合計10年間を更年期といいます。日本人の女性が閉経を迎える年齢は、50〜51歳といわれていますので、閉経を挟んだ45〜55歳あたりが 「更年期」となります(ただし閉経年齢には個人差があるので、40代前半から始まる人もいます)。

その不調、ひょっとして更年期障害かも?
この時期は、女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が急激に減少することでホルモンバランスが乱れ、心身の変化や不調を感じる人も多くいます。この不調を「更年期障害」と呼びます。「更年期」自体は誰しもあることですが「更年期障害」の症状は個人差が大きいのが特徴です。よく「私には、更年期なんてなかったわよ!」と話す高齢女性もいますが、正しくは「更年期障害がなかった」です。
更年期障害の症状は、実に多岐にわたり、個人差が大きいのも特徴です。 代表的な症状にホットフラッシュと呼ばれる「のぼせ」や「ほてり」があります。 汗をかいたかと思ったら、急に冷えてしまったりするなどの自律神経の乱れです。 またイライラしたり夜眠れなくなったり、寝つきが悪くなるなどの不眠、焦燥感や不安感も更年期障害の症状です。
他にも頭痛や耳鳴り、手足のしびれ ・こわばり、肩こり、関節痛、頻尿、性交痛、皮膚のかさつき、目の疲れ、動悸・息切れ、全身の疲れやすさ、など人によって出る症状が変わるのも更年期障害の特徴です。特に私のクリニックでは、「性交痛外来」を開設し、主に女性の性交の悩みを治療していますが、これまで誰にも相談できず、長年ひとりで悩みを抱えていた方も珍しくありません。

エストロゲンの低下に伴い、様々な症状が。個人差も大きい。
私が体験した泥沼のような更年期障害
何を隠そう私も朝、起きられなくなったり、さらにはお風呂に入っていたら急に涙が出るなど、更年期障害の症状に悩まされたひとりです。
私は自他ともに認める「仕事モンスター」なので、若いころは日中、バリバリ仕事をして、夜遅くまで残業をしたり、ときに飲み会に参加しても、朝はきちんと起きられていました。しかし、やがて更年期に差しかかり、これまでどおりに就寝しても朝、起きられなくなってしまったのです。
這いつくばるようにして起きても頭はぼーっとしているし、着替える気力もなく、しばらくは寝間着のまま。昼近くまでベッドから起きられない日に「たるんでるんじゃない?」と言われたこともあります。でも、本当にどうしても起きられないのです。「一体、どうしたらいいんだろう?」と絶望感に苛まれました。
また同じ話を何度もするようになり、友人からたしなめられたことも。 認知機能にも影響が出ていたのだと思います。デリケートゾーンのニオイが気になり出したのは46 歳のときでした。
仕事へも支障をきたしたことから、 医師に相談をして女性ホルモンの補充療法を始めたのが49歳。今でこそ体調は穏やかに回復してきましたが、他人のことなら「これは更年期障害よね」 なんて冷静に話せてもいざ自分事になるとパニック状態になるのは人の常なのだと実感しました。
3つの治療法で更年期障害を脱出
泥沼のように苦しい症状に悩んだ挙げ句、半年ほど経ってようやく自分が更年期障害だと気づきました。私が行った治療方法は、①女性ホルモン補充療法②テストステロン注射 ③デリケートゾーンマッサージの3つです。
私のような深刻な更年期障害では、保険適応の女性ホルモン補充療法だけでは対応できません。テストステロン注射を2か月に1回打つ男性ホルモン治療も加えました。
そしてエトロゲンの減少が引き金となって起こるデリケートゾーンの悩みを解消するため、エストロゲンの有用成分であるエストラジオールを配合した美容オイルを使用して、毎日お風呂上がりにデリケートゾーンのマッサージをしました。マッサージ開始から8週間で乾燥、ニオイなどデリケートゾーンの悩みが解消し、擦れて痛かったTバックも穿ける身体に戻りました。
このマッサージの具体的な方法は『女医が教える性のトリセツ』も詳しく解説していますので、ぜひご覧いただければと思います。
人生100年時代は、「閉経してから」のほうが長い!
「閉経したら女は終わり」。そんな言葉を聞くことがあります。
そもそも更年期の「更」とは、「かえる/かわる/替わる/改める」などの意味を持つ漢字です。「更衣室」「更新」の更ですね。つまり更年期は「変わる、変える」 という意味。決して「終わった」という意味ではないのです。
人生100年時代においては、私たちの人生は「変わって(更)」からのほうが長い。そんな中では、身体に起こる変化を受け入れて、前向きに生きていくことこそが人生を謳歌する秘訣、そう私は考えています。
構成/アケミン
女医が教える性のトリセツ
富永 喜代

発売日 : 2022/2/25
価格 : ¥1,430
出版社 : KADOKAWA (2022/2/25)
単行本 : 208ページ
4048971832(ISBN-10)
978-4048971836(ISBN-13)
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