2階には貸衣装・着付けを行うスタジオが入っている東京・西浅草のカフェ「ベトナム料理 バコンチャオ2号店 浅草店」。
スタジオのお客は、浅草で和服を着たいが言葉に困るというベトナム人が中心。明るい色合いが多い着物のセレクトもベトナム人好みだそう。

ベトナムのトレンドスイーツは豚肉のせ!? 「謎ケーキ」を味わえるカフェを浅草で発見
塩漬け卵、さらには豚肉をのせたケーキがベトナムで流行っているらしい。ベーコンパンケーキ的な食事向けケーキではなく、あくまでもスイーツだ。日本ではほとんどない、このケーキを食べられるお店が浅草にあったのでさっそく訪ねてみた。
ベトナムでブームの「bánh bông lan trứng muối」

パステルトーンの和服が多いのが特徴的

1階のカフェスペース
一方、1階のカフェは通りがかる地元の日本人のお客にベトナムコーヒーの飲み方を紹介することをコンセプトにして運営し、ランチでは本格的なフォーなども提供する。
このお店で現在、予約制で提供しているのが「bánh bông lan trứng muối」(バイン ボン ラン チュン ムオーイ)。直訳すると、塩漬け卵のスポンジケーキ。このケーキの最も奇抜なトピックである豚肉が名前から抜け落ちているところも異文化的で謎が深まる。

「bánh bông lan trứng muối(バイン ボン ラン チュン ムオーイ)」は中型ホールで2000円
「物産展のようなイベントで見かけることはありますが、飲食店で出しているのは日本ではすごく珍しいと思います」
そう語るのは、今回このケーキを紹介してくれた、お店の運営会社リームビューティー広報担当のヴォさん。
「ここ2、3年、ベトナム現地でブームになっているケーキ。在日ベトナム人もハマっています。ベトナムではカフェやパティスリーではなく屋台にあるようなものですが、バースデーケーキにしたりもするんですよ」

明るく出迎えてくれたお店のスタッフたち
ベトナム人が好む味のバランス
黄色いスポンジ生地にとろりと白っぽいソースが輝く様子は、とてもわかりやすいあま〜いケーキを想像させるが、この上にトッピングされているのが豚肉と塩漬け卵というのが謎なのだ。

外側に配置されたふわふわしたものが乾燥させた豚肉のフレーク「chà bông(チャ ボン)」。これはご飯のお供として醤油をかけて食べることも多いという。
中央に砕いた卵の黄身がのっている様子もかなり奇抜に感じるが、この塩漬け卵は中国菓子でベトナムでも伝統的に食べられている月餅(げっぺい)によく使われると聞くと納得いくような気もする。
「甘いだけだと飽きるので、塩気も交えたこういうケーキが人気なんです。すっぱいマンゴーに塩をつけて食べたりもするし、ベトナム人の好みなんだと思います。私も甘いだけのケーキよりこういう味が好きですね」
そう話すのは、ケーキを作ってくれたカフェスタッフのユンさん。
「私のこだわりは卵の塩加減と豚肉のフレークの食感。それとなんといってもソースです。ちょっとした分量のバランスで味が変わってしまうので」
意外なほどの味の奥行きに舌鼓
ソースはマーガリンを使用したオリジナルのもので、フォークを入れるとスポンジからも染み出して溢れてくるほどたっぷり。

練乳に例えればいいだろうか。コッテリと甘いソースがカステラのような重ための生地になじみ、脳に直接来るような甘さなのだが、そこに塩漬け卵の柔らかい塩気が顔を出す。
豚肉フレークは、でんぶのような、あるいはさきイカのような食感で、噛むほどに味が染み出してくる。
どっしりしたスポンジにとろりと舌にからみつくソース、乾燥して繊維質な豚肉フレーク、粉っぽくも湿度をはらんだ卵の黄身と、あらゆる食感が詰め込まれ、ユンさんがこだわるようにちょっとした配分で味が変わりそうだ。
いかにもB級グルメっぽい構成に反して味の奥行きが深く、一口を長く楽しめるのが意外でもある。強い甘さを引き立てる塩気のバランスにはどこか懐かしさも感じられる。
「友達と集まって、ゆっくりつまむイメージです」とヴォさん。
「ベトナムではコーヒーを飲むのは男性が多くて、女性はお茶やレモン系の酸味のある飲み物と一緒に食べることが多いと思います」
作ったユンさんは温かいお茶と合わせて食べるのがおすすめだという。
特別にサービスしていただいたベトナムコーヒーとともに味わうと、たっぷりとお茶を飲みながらおしゃべりに興じるベトナムの休日が思い浮かぶよう。
ぶっ飛んだ謎の食べ物かと思いきや、優しい思い出になりそうな食体験となった。
取材・文/宿無の翁
撮影/近藤みどり
ベトナム料理 バコンチャオ2号店 浅草店
住所/東京都台東区西浅草2-25-9
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