“おじさん”は自分でループを作り出す生き物

「家族をバンドや劇団に置き換える」マキタスポーツに聞く“老害おじさん”にならないための処世術_01
マキタさんが『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』で演じた永久部長
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――映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022)は、小さな広告代理店に勤める社員たちがタイムループに陥る物語。マキタさんが演じたのは、社員の中で唯一タイムループに陥っていることに気づいていない、永久(ながひさ)部長役です。完成した作品をご覧になった感想は?

こんなに同じ1週間を繰り返していたんだって、本当にうんざりしましたね(笑)。若い社員たちは徐々にタイムループに気づいていくんだけど、最後まで部長だけがわかっていない。時間の解釈が人によってまだらな感じが、じんわりと面白かったです。

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――くだらない親父ギャグを言いながら出社してくる永久部長の姿を見て、部下たちは「また同じ月曜日を繰り返している!」と気づきます。同じシーンに見えますが、すべて演じわけられたんですか?

使い回しはほとんどしてないんじゃないかな。実際に演じましたね。僕がまず思ったのは、部長自体がタイムループの象徴だということ。なんかね、おじさんになってくるとイレギュラーなものを許せなくなってくるんですよ。

同じ時間帯に起きて、同じ時間帯の電車に乗り、決まった時間にトイレに行って、ご飯を食べる。同じお店の同じ席に座り、そこで決まった数のビールを飲んでお家に帰る……。そういうループを自分で作り出すようになるんですよね。だからこそ、毎日同じような新鮮な気持ちで、低レベルのダジャレを言えるんだろうなって。

映画の中では、そんな部長にもチャレンジ精神があって、若い頃には夢が正しくあった過去が描かれます。歳をとってルーティンに埋没し、ひとりだけタイムループに気づかない“つまらない大人”の典型である永久部長を変えようとする展開は、面白かったです。

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――マキタスポーツさん自身は、“つまらない大人”と真逆のイメージです。

そう思っていただけたらすごくありがたいんですけど、家族からは、同じ話をするおじさんとしておなじみです。家族の中では永久部長ですよ。

僕自身は自由業ですから、サラリーマン的な暮らしをしている方の生活スタイルとは違うし、そこにあまり馴染めずにエンタメの世界に入った人間です。だからこそ、規則の中でルーティンを繰り返すことに対する漠然とした憧れがあるんです。

自由業ではあるけれど、その中でどうやって規則やマイルールを作っていくかに関心があります。ルーティンを作ると、安心しますからね。僕の場合はカバンの中がそう。“このブロックにこれを入れる”ということを全部決めているんです。でも、ルールを決めて環境を整備すると、今度は旅先とか、イレギュラーな場所で想定外のことが起こるとパニックになるんですよね。

これって、災害とかに関しても言えることだなって。人間が環境を整えて、想定内の範囲をいくら広げても、想定の範囲外からやってきたものに対しては対応ができない。ルールやルーティンの中にいると安心だけど、イレギュラーなことはあるんだということを、考えておかないといけないと思います。