みなさま、はじめまして。ヨガ講師やセラピストなど女性の体と心の健康にまつわる活動をしています仁平美香(にへい・みか)と申します。
これからわたしの心に響いた作品の中から、女性がより健やかに、より輝いていくために特に見てほしい映画を紹介させていただきます。
寄稿させていただくにあたり、まずは大好きな歌にまつわる映画から書いてみたいと思い、第94回アカデミー賞において作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門を受賞したことでも話題の『コーダ あいのうた』を選びました。女性だけでなく男性もきっと心揺さぶられる映画ですので、まだ見ていない方はぜひ。
愛情に包まれたい人必見!『コーダ あいのうた』
ヨガ講師として活躍する仁平美香さんが、女性の美と健康に効く映画をピックアップ。映画を見終わった後に実践したい、体をととのえるメソッドもお見逃しなく。
ヨガの伝道師・仁平美香の“ととのう”映画①
ヒロインの健気な姿に胸をうたれる

© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
自分以外は全員聴覚障害がある家庭に生まれた主人公ルビー。
タイトルとなっているコーダとは、“Child of Deaf Adults”=聴覚障害のある人の子供という意味です。
毎朝3時起きで父と兄の漁を手伝いながら学校にも行き、小さなときから家族と外部の通訳役もこなし、歌のレッスンもして……という健気な姿に胸をうたれます。
主人公ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの心に染み込んでくる歌声。そして手話も、この映画のために覚えたとは思えないくらい表情豊かです。
家族のシーンは当然、セリフがほぼなく、手話での会話のみ。
波の音や魚と魚がぶつかる音、食器を並べる音などがとても際立って聞こえ、聴覚に障害のある人の世界の1ページに触れて、わたしの登場人物に対する感じ方も、パラパラとシーンごとに剥がれ落ちては変わっていくのを感じました。
歌を含めたルビーの成長とともに描かれるのが家族の愛。風変わりだけれどとにかく愉快で魅力あふれる両親、ぶっきらぼうだけど男らしくて優しい兄。
家族全員明るさの陰に、それぞれ自信がなかったり、心配や恐怖をかかえていたり。それでも恐れを乗り越えて家族の幸せを一番に考える姿、人として成長していく姿に胸があたたかくなり、お互いの絆が更に愛の形を大きなものに変えたのだなと気づき、涙を流さずにはいられませんでした。
歌を諦めた10代のほろ苦い思い出

© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
密かに憧れていた男の子を追いかけて入った合唱部でルビーの持つ歌の才能を見出してくれたV先生も個性的で神経質で、でも実はものすごく熱くて温かい。
個人的なエピソードになりますが、わたし自身、ルビーと同じくのどかなところで生まれ育ち、音楽の先生に東京の声楽科への進学を目指すよう勧められた経験があります。
その流れで授業の帰りに数か月だけ先生の自宅で聴音や歌のレッスンをしていただいたことがあり、当時の先生を思い出しながら見ていました。
結局わたしは経済的理由や自信のなさから音楽大学受験をあきらめましたが、V先生を通して青春時代に指導してくれた先生への感謝が蘇ってきました。
聴覚障害者の家庭であることからからかわれることも多く、学校では自分を出せないでいたルビーは、どんな困難に直面しても諦めずに自分の未来を切り開いていきます。
私自身、音大をあきらめた10代の頃のほろ苦い経験から、今では何事もあきらめずにいようと心に決め、好きなことに全力で向き合うようにと生きているので、この映画からあらためて勇気とパワーをもらいました。
この作品に感動したあまり、もとになったフランス映画『エール!』も鑑賞しましたが、こちらも素敵な映画でした。一家の生業が『エール!』は漁業でなく酪農であったり、家族の持つ魅力(特にお父さん!)や主人公にはまた違った輝きがありますのでぜひとも両方見ていただきたいです。
歌や音楽が好きな方だけでなく、あたたかい愛情に包まれたいすべての人におすすめしたい映画です。
『コーダ あいのうた』(2021)Coda/上映時間:1時間51分/アメリカ
●公開中
歌を気持ちよく歌う呼吸法をレクチャー!
さて、ここからは映画にちなんで、歌うことが大好きでヨガの指導もしている仁平さんから、歌を歌う上でとても大切なおなかをトレーニングするための呼吸法を紹介します。

1.まずは楽な姿勢で座ります。おしりを左右に軽くゆすり、坐骨をマット(椅子であれば座面)に立てます。
※坐骨はおしりをゆするとゴリゴリとあたる骨盤の下部分の骨です。
写真のような安楽座が苦手な方は椅子に座って行ってもOK
2.肛門の5㎜ほど前から頭頂の百会(ひゃくえ)の位置(鼻の真ん中と耳の付け根を頭頂に向かって上っていて交わる部分)まで1本の軸が通ったように意識し、百会が天井から吊られるようにイメージして座りましょう。(おなかをつぶさず、かといって前につきだしすぎず、背骨がやさしいS字カーブを描くように)
3.お腹に手を当て吐く息に意識を向け、ゆっくり8秒くらいかけて吐きましょう。このときにできるだけおなじペースでおなかが凹んでいくようにするのが、高い音や低い音を出したり声量をあげていくときに支えてくれるお腹を作っていくためのポイントです。吸う息は自然に、秒数はカウントせずに気持ちよく吸い(だいたい2~4秒程度)、5呼吸~10呼吸ほど続けます。
歌うことが好きな方だけでなく、テレワーク等で会話する機会が減っている方もお腹のケアのためにぜひ実践してみてくださいね。