6泊7日に及ぶ合宿形式で行われる『WACKオーディション』。早朝マラソンから始まり、激辛ソースがかかった食事の完食や、歌とダンスのパフォーマンス審査など、参加者を肉体的にも精神的にも追い詰める過酷な内容になっている。
候補生だけではなく、各グループから現役メンバーが一人ずつ合宿に参加することも、『WACKオーディション』の特徴の一つだ。今回、ASPから参加したユメカ・ナウカナ?に、候補生とともに過ごした七日間を振り返ってもらった。

ASPユメカ・ナウカナ? が語る、WACKの日本一過酷なオーディション
BiSHや豆柴の大群など個性豊かなグループが所属しているWACK。なかでも今、最も注目されているのが、8月31日にavex traxからのメジャーデビューを果たすASP(ANTi SOCiETY PUNKS)。そんなASPのオリジナルメンバーであるユメカ・ナウカナ?の単独インタビューの後編では、同事務所の「名物」とも言える『WACKオーディション』の舞台裏について伺った。
ユメカ・ナウカナ? インタビュー【後編】

ストッキング一枚で踊る、過激なパフォーマンスも
――オーディションへの参加が決まったとき、どう感じましたか?
実は最初はASPからはナイナイ(ナ前ナ以)が参加することになっていて。自分は行かなくていいんだ、と正直ホッとしてました。でも、ナイナイがコロナにかかって、参加できなくなってしまって……。「代わりに行ってください」って言われたときは、ヤバイ!と思いましたね。
――課題曲の振り付けの練習などは大丈夫でしたか?
実は課題曲の振り付けは、参加が決まる前から練習してたんです。合宿に行くナイナイだけが頑張るのはなんか違うよなと思っていて。私も同じくらい頑張ろうと決めて、勝手に走り込みとかもしていたんです。だから代役を頼まれたときには、どこかで「私が行くしかないじゃん!」っていう気持ちもありました。
――課題曲の一つは、SAiNT SEXの「WACK is FXXK」でしたよね。ユメカさんのグループは、みんなでズボンを脱ぎ捨てて、肌色のストッキング姿でパフォーマンスをされていました。一瞬、「裸になったの?」と驚いたのですが、あの演出もユメカさんの提案でしたよね。
そうですね。候補生の子たちの姿を見ていると、本当の自分を出し切れてないような気がしていて……。きっと彼女たち自身も、モヤモヤしていたと思うんです。WACKオーディションは、合宿期間内にどれだけ「変われるか」が重視されるんです。殻を破るには、一回今の自分を出し切るしかない。
だから、このまま合宿が終わってしまったら、きっとみんな後悔しちゃうだろうなって。それでまずは形だけでも「WACKらしさ」を味わってもらえないかなと考えて、あの演出を思いついたんです。
私もWACKに入って吹っ切れて、下ネタなんかもバンバン言うようになって、勢いに乗れた。候補生のみんなにも、「ここまやったんだから、もう怖いことなんてないじゃん」って思えるような経験をしてほしかったんです。
――候補生から「やりたくない」という声は上がらなかったですか?
なかったです(キッパリ)! 自分をさらけ出せる場所があったら、やっぱり変われるんです。みんなそのことに、どこかで気づいていたんだと思います。

殻を破らないと、WACKのアイドルにはなれない
——合宿の様子はニコ生で24時間生中継されていたので、私も視聴していたのですが、すごく印象的だったのがユメカさんが「包茎」という言葉をネットで調べはじめたシーンです。将来、自分が男の子の母親になったときのために、と言って……(笑)。
ははは! 本当に全部が放送されていたんですね(笑)。私、自分が目立とうとしているわけじゃないんですけど、いつの間にかやり過ぎちゃうというか、突っ走ってしまうところがあって。それはもう、この合宿に限ってのことじゃないんですけどね。グループで活動しているときも、一人で突っ走り過ぎたらダメなんだなっていうことに、合宿を通じて改めて気づかされました。
――その一方で、現役メンバーのなかで、ほかの誰よりも候補生を気づかっているように感じました。
うーん、どうでしょう。今回は候補生を教える側でもあったわけですけど、どこまでそれができたのかは自分でもわからなくて。人に何かを教えるのって、すごく難しいんですよね。やっぱり言葉だけじゃ伝わらないんですよ。「殻を破らないと合格できないよ」とか、アドバイスはできます。でも、口でいくら言っても伝わりきらないというか。そこはめちゃくちゃもどかしくて、悔しかったですね。
――WACKオーディションでは毎日必ず脱落者が出ます。合宿を去っていく子たちを見ながら、どういう気持ちでしたか?
目の前で脱落していく子たちを見るのは、今思い出しても泣きそうなくらい辛かったです。WACKオーディションでは、前日に脱落した子が敗者復活できる救済処置っていう仕組みがあって。たとえば「腹筋が一番できた子が復活できる」みたいな感じなのですが、その対決の時間が、すごく辛いんですよ。どの子にも残ってほしいけど、私にはもう応援することしかできない。気づいたら涙が流れて、「がんばれ」ってつぶやいてました。
――涙を流すほど感情移入したのには、何か理由があるのでしょうか?
脱落した子も、自分と同じぐらいWACKが好きで、自分と同じぐらい「アイドルになりたい」って思っていたわけじゃないですか。そういう子たちが合格できないっていう現実に、ちょっと耐えられなかったんだと思います。「自分の力不足でこうなってしまったんだ」というのも、すごく感じていました。

――オーディションで、ユメカさん自身が辛かったことってありましたか?
チームごとに順位がつくのは、やっぱりしんどいですよね。がんばった分だけ、結果が出るってわけでもない。これをやれば勝てるっていうんだったら、簡単なんです。走ればいいんだったら私はいくらでも走るし、「はい、虫食え」って言われたら食べちゃうだろうし。だけどオーディションって、そういうものじゃないんですよね。
候補生のなかには「歌も踊りも初めてです」っていう子もいるんです。そういう子はパフォーマンスだけで精一杯なのに、少しでも合格に近づこうと必死で努力している。それなのに「順位」というかたちでランク付けされちゃうことが、もう本当に嫌で。もちろん、それが仕方のないことだって、頭では分かっているんです。それでもやっぱり、私はどうしても「順位つけられる」ってこと自体が苦手なんだと思います。
――でも順位と言えば、毎日の早朝マラソンではユメカさんはいつもぶっちぎりの一位でしたよね。
毎日考えなきゃいけないことが一杯あったので、それを考えながら走っていたら1位になっていた感じです。いや、ホントにまぐれなんです。
――早朝マラソンでただ走るだけでなく、折り返し地点に用意された特大おはぎを食べたりもしていましたよね。あれを完食するのは大変じゃなかったですか?
ここで死ぬんだなと思いましたよ(笑)。水も飲めないのにおはぎを食べて、苦しくて「ここが墓場だ」って思いました(笑)。

三度目の正直で、メジャーデビューの舞台へ!
――「WACKオーディション」では、視聴者の間で「#ユメカうるさい」というハッシュタグも飛び交っていました。ユメカさんって、子供の頃に「お喋りしない方がかわいいよ」とか言われたりしませんでしたか?
うわ〜、もうクッソ言われてきました! アイドルになりたかったから、見た目とかは結構気にしている方だったんですよ。メイクとかも人より早くしていたし、入学式とかでちょっと周りがざわつくくらいには、可愛い感じにしていたんですよ。でも結局、数日でうるさい性格がばれちゃって。
「喋らない方がかわいいよ」っていうのは今も言われたりするんですけど……(苦笑)。もうこのままの私を愛してって感じです(笑)。
――合宿に参加する前と後とで、ユメカさん自身に変化はありましたか?
やっぱり今、この活動をやらせてもらっていることのありがたさを改めて感じました。あとは、一緒に合宿に参加していたほかのグループの現役メンバーを間近で見て、「私ももっと頑張らなきゃな」って感じたのも素直な気持ちですね。
BiSHのチッチ(セントチヒロ・チッチ)さんとか、紅白にも出たりしている人が、ふつう生配信で一緒に歯磨きとかしないじゃないですか。私はBiSHにめちゃくちゃ憧れていたので、ちょっと不思議な感覚でした。
でも、合宿のときだけではなくて、BiSHのみなさんって、いつも身近な感じで接してくれるんですよね。アイナ(アイナ・ジ・エンド)さんも、ちょっとした相談に乗ってくださったり。みなさん、とても優しいんです。
――オーディションを経て、ASPにはチッチチチーチーチーさんとリオンタウンさんが加入されました。最終発表までは、現役メンバーのみなさんも、誰が加入するかを知らされないんですよね。
全く知らないですね。私たちは誰が加入するのかも、そもそもどのグループに増員があるのかも知らされていません。でも、合格した二人は、自分のなかでビビッときていた二人だったので。だからすごく納得感があったというか、「入ってくれて良かった!」と思いました。
――新メンバーも加入したASPは、いよいよ8月31日にメジャーデビューします。最後に、ユメカさんの今後の意気込みを聞かせてください。
私は前のグループ(注:前編参照)でメジャーデビューを目指して共同生活をしたのに解散するっていう、本当につらい経験をしているので……。メジャーデビューさせていただけるっていうことが、どんなにありがたいことかっていうのを誰よりも感じています。
デビューを報告したときは、「やっとユメカちゃんの夢が叶ったね」って泣いてくれているファンの子とかもいたんです。その期待に応えるためにも「ASPってすごい!」って思ってもらえるようなパフォーマンスをしなきゃならない。そう思っています。
