
【漫画あり】富士山の山頂付近で打ち合わせやネーム制作。アウトドアコメディ漫画『やまさん〜山小屋三姉妹〜』がリアルな描写で溢れる理由
三姉妹が経営をする山小屋「雲海小屋」を舞台とした本格派アウトドアコメディ漫画『やまさん〜山小屋三姉妹』(「となりのヤングジャンプ」にて連載中)の単行本1巻が、2月17日(金)に発売。作者・坂盛(さかもり)氏に、キャラクター制作へのこだわりやアウトドア感溢れる制作の裏側について聞いた。
『やまさん』作者インタビュー#2
個性的な登場人物の描き方
––キャラクター作りに苦労されたという、山小屋で働く三姉妹(沢子、稜、華歩)が誕生するまでの経緯を教えてください。
連載を目指してネームを作るにあたって、何度もボツをもらいながら、必死にキャラクターを練りました。でも、いくら描いてもヒロインのOKが出なくて…。その原因は詰め込み過ぎてしまうことだったので、ヒロインを3人にして、キャラクター性を分配してみました。そしたらバランスよく、感情移入して描きやすい三姉妹が出来上がったんです。

––三女・華歩を追って山を訪れるメインキャラクター「西園寺」についてはいかがでしょうか。
三姉妹を中心としたネームを作って連載会議に出したあと、「読者目線の人物が必要だろう」とフィードバックがありました。西園寺はそのときに生まれたキャラクターです。3姉妹を作るのにかなり苦労したので、それなら男性で考えようと。
年齢は成人でもよかったのですが、女性3人が働く山小屋にいても違和感がないキャラクター、ということで三女と同じ高校生で、性格は三女の真逆にしました。やや幼いキャラクターだと感じている方もいるかもしれませんが、物語的にはすごくフィットしたと思っています。

––ほかにも、山小屋を手伝いに来てくれる「桜場さん」や個性的な登山客たちが登場しますよね。そういったキャラクターづくりにも苦労されるのでしょうか。
実は、そこにはあまり困ってないんです(笑)。山で働きながらたくさんの個性的な人たちに出会ってきたので、その人たちを思い出しながら描いています。特定のモデルがいるわけではないですけど。こうやって振り返ってみると、漫画を描こうと思った理由、作品のテーマ決め、キャラクター作りまで、これまでの経験がすごく私を支えてくれていますね。
––まるで少年漫画のようなお話ですね。
そうですよね。熱い展開です(笑)。
担当とのミーティングは「雲海を眺めながら」
––本作の舞台となる特盛連峰・雲海小屋にはモデルがあるのでしょうか?
特盛連峰のモデルは栃木県にある那須岳で、雲海小屋はそこにある「煙草屋旅館」をモデルにしています。山小屋をテーマに決めたとき、煙草屋旅館の方にモデルにしていいか聞いてみたのですが、快くOKしてくれました。
––ネームを作るにあたり、那須岳には改めて登りましたか?
本作の連載ネームを考えているときは、実は富士山の山小屋で働いていたんです。9号目にいたのですが、風がとにかく強くて。担当さんと電話で打ち合わせをするときも、「風で全然声が聞こえないよ!」みたいなやりとりが何度もありました(笑)。でも、雲海を眺めながらの打ち合わせはすごくいい時間でしたよ。
––『やまさん〜山小屋三姉妹〜』がリアルかつ読み応えのある作品なのは、先生の実体験に基づいた確かな知識の裏付けがあるからなのか、と腑に落ちました。
そうかもしれません。とはいえ知識が足りないこともあるので、友人に聞いたり、お世話になってきた人たちに都度聞いたりしています。
––もうひとつ、坂盛先生の作品は迫力のある“カメラ位置”が魅力的だと感じます。これも、実際に“その状況”を経験しているからこそ描けるのでしょうか。
そうですね。そこにいる人の目線をイメージできることが、リアルでダイナミックな表現につながっているのかもしれません。

「四季の移り変わりと三姉妹の交流を描きたい」
––富士山で打ち合わせをすることもあったとのことですが、外出先で作業されることもあるんですね。
基本的には自宅で作業していますが、リフレッシュしたいときにふらっと外に出たり、近くの山でネームを考えることもあります。
––山でネーム…『やまさん〜山小屋三姉妹〜』を描くにはピッタリですね。では、本作を描くうえでのこだわりを教えてください。
作画の面で言うと、せっかくの山の漫画なので「自然物は絶対に自分で描く」ということでしょうか。こだわりというだけでなく、構図が自分の中にしかないから、説明するほうが難しかったりしますしね。
––続いて、本作で今後描きたいことを教えてください。
山には四季ごとにたくさんの表情がありますし、来るお客さんも違います。だから、その移り変わりと三姉妹との交流を描いていきたいですね。それから、西園寺がどう成長していくのかは、作者としても楽しみです。インナーマッスルをしっかり鍛えて、歩荷(ぼっか)も頑張って欲しいと思っています(笑)。
––このたび『やまさん〜山小屋三姉妹〜』の1巻が2月17日に発売されます。読めば読むほど味わいのある作品なので、1冊を通して読むのが楽しみです。
ありがとうございます。単行本には、作中では詳しく描けなかったことをおまけ漫画として収録しています。キャラクターのもっと深いところを知れるので、ぜひ楽しみにしていてください。

––同時にボイコミも公開されましたね。
そうなんです! 自分の生み出したキャラクターに声がつくのはとてもうれしいですし、客観的に見られるのも初めてなので、ちょっとドキドキしています(笑)。
––では最後に、読者に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
本作を読んで、山を登るときの参考にしたり、反面教師にしたりして、ぜひ山に登ってみて欲しいです。そして、今後も『やまさん〜山小屋三姉妹〜』をよろしくお願いします!
『やまさん〜山小屋三姉妹〜』第2話を読む(すべての画像を見るをクリック)
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文・インタビュー/鳥山徳斗
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