「生まれた時からずーっと 将来もコジコジはコジコジだよ」「遊んで食べて寝てるだけだよ なんで悪いの?」
――これはすべてマンガ『コジコジ』の主人公・コジコジのセリフ。
年齢も性別もすべて謎だらけな生き物・コジコジとその仲間たちの毎日には、子供も大人も関係なく心をつかむ不思議な力がある。
さくら先生がかつて話した「私が(コジコジで)やってみたい分野は“ナンセンス”です。一見メルヘンに見えるけど、実はとんでもない“馬鹿メルヘン”をコジコジを使ってやってみたいのです」という言葉。そんな“馬鹿メルヘン”な作品の魅力をたっぷりつめ込んだ展覧会『コジコジ万博』の見どころをレポートする。

“馬鹿メルヘン”な世界を体感できる『コジコジ万博』の魅力をレポート!
作家・さくらももこが残した名作のひとつ『コジコジ』。不思議な生命体・コジコジと仲間たちの毎日を描いた作品には、真意をついた言葉やプッと笑えるギャグがあふれている。作品の魅力を堪能できる展覧会『コジコジ万博』が、4月23日(土)から『PLAY! MUSEUM』(東京・立川)で開催中だ。
さくらももこが描いた愛しくシュールな世界

入口ではイエローとピンクのネオンカラーにコジコジがどでかく描かれたポスターがお出むかえ。そして、その横にはイタズラに笑う2人のキャラクターパネルが。
むかって右はナゾ怪人のスージー、左はあくまのブヒブヒだ。
スージーが「入場料100万円だよ」と言って、入口へとご案内してくれる。スージーは人をだますことを考えるのが趣味だ。だまされてはいけないぞ。
1枚のラクガキからはじまった
さくら先生がコジコジを初めて描いたのは、なんとラクガキから。初めて描いたその小さなイラストの原画が、入ってすぐの空間【コジコジ誕生】に展示されている。
何を考えているのかつかめない、なんとも言えない表情の変わらなさにほっこりしつつ、視線をとなりにうつす。
そこにはさくら先生直筆のエッセイ原稿が。作者本人の言葉、そして文字で語られる“コジコジ誕生の時の話”は必見だ。

額装もさくら先生自身が作成したもの
ようこそ『メルヘンの国』へ!
コジコジについて、わかったようでわからない。
でももっと知りたい。そんな気持ちになったら、次の【ギャグ50連発】へ。

カオス感ただよう門をくぐると、大きな木やもこもこの雲に囲まれた緑の道が広がる。そこはまさしく、コジコジたちが暮らす『メルヘンの国』だ。
この空間のみどころのひとつが大きなコジコジの顔!
プロジェクションにより、表情はコロコロと変わり、さらに吹き出しに映し出されるセリフも変化する。

この空間のあらゆるところにプッと吹き出す名ギャグシーンが散りばめられているため、歩みを進めるたびに上下左右、キョロキョロと見渡してしまう。
夢中になっていると「毎日? あのね空飛んで遊んでね、そんでお菓子食べて、山に行って遊んだりね…」とコジコジの声が聞こえてくるので、楽しい気持ちが高まってなかなか前へと進めない。

まるで3年インコ組の一員に!?
メルヘンの国の道をぬけると、コジコジが通う学校・3年インコ組の教室を再現した【コジコジと仲間たち】の展示スペースへ。

まるで本物の教室かのように並ぶ机とキャラクターたち。クラスメイトになった気持ちで近づくと、机の上にはプロフィールとそのキャラクターが登場するシーンの原画が展示されている。
誰ひとり取りこぼすことなくしっかりと個性のあるプロフィールなので、じっくり見入れば“コジコジマニア”になれること間違いなし。

コジコジの隣の席は半魚鳥の次郎
コジコジと次郎が、動く!
教室の奥には小部屋が。少し暗くなったその場所では、新作コマ撮りアニメ【コジコジと次郎の不毛な会話】が上映される。

NHKキャラクターの「どーもくん」や、『リラックマとカオルさん』で知られるアニメ制作スタジオ「ドワーフ」がアニメを制作している。
ぽてぽてとかわいらしく動くコジコジと次郎、そして自由すぎるコジコジと振りまわされる次郎の会話もじっくり堪能すべし。

撮影のために作られた人形も展示されている
トンネルを抜けるとそこには…
『コジコジ』に登場するキャラクターたちには、それぞれにさまざまな悩みがある。(ただし、コジコジをのぞく)
彼らの悩みを表現したかのような白くモヤがかかった空間は【モヤモヤトンネル】と名付けられている。
メルヘンの国に迷いこみ記憶をなくした人間・ジョニーの“自分はいったい何者なのか”、容姿に自身の持てない天使・吾作の“容姿へのコンプレックスと恋の悩み”……メルヘンの国の住人たちが抱える悩みには“分かる分かる”と言いたくなるものも。

モヤモヤトンネルを抜けると、野外シネマをイメージした空間にたどりつく。夜空に浮かぶようなスクリーンには、キャラクターたちのやさしさに触れることができる名シーンが流れていく。
この【エモーショナルフレンズヒーリングゾーン】では、言葉で音で、しみじみと気持ちが癒されていくのを感じてほしい。

癒されたあとはモノクロ、カラーの原画がずらりと並ぶ圧巻の【原画で読む名場面8】が待っていた。

ここでは数々の名場面から8つを厳選し、その原画を展示している。まずはその内容を楽しむために1周し、さくら先生のこだわりがつまった原画を細部までみるためにもう1周…と何度でも楽しみたい。
壁に展示されているのはすべてカラー原画。すべてコットン紙に描かれたやわらかで、ぬくもりのある着色とおどろくほど細かく描きこまれた絵柄は圧巻の一言!
さくらももこが描いた“コジコジとまる子”
さくらももこと言えば『ちびまる子ちゃん』だ。
マンガにアニメにと長く愛されるこの作品の主人公・まる子は、実はコジコジと仲良し!
あわい桜色の壁が設置された【コジコジとまるちゃんとさくらさん】では、そんなコジコジとまる子の交流を原画でみることができる。

ハイテンションでカオスな空間!
まる子とコジコジ、二大スターの共演に見入っていると、何やらとなりの部屋から“ブオー!”という音が。
ただごとではない!と移動すると、そこにあるのは【物知りじいさんの湖】じゃないか!
ここでは、メルヘンの国の森にある不気味な湖に住む、首がどこまでも伸びる老人・物知りじいさんに会うことができる。
音の正体でもある首が伸びていくさまはおもわずボーゼンと見つめてしまい、“なんかすごいものを見た”という気持ちになってしまう。

不気味な物知りじいさんの隣は【ディスコ☆ポケット カウボーイ】の空間だ。
『コジコジ』は1997〜1999年までテレビアニメが放送されており、そのエンディングテーマ曲となっていたのが電気グルーヴが歌う『ポケット カウボーイ』だった。
アニメ映像にも出てくるお立ち台、テクノポップな音楽、ミラーボールの光が反射する空間はまるでディスコのよう!
スペースにはテレビ型のプロップスも置かれていて、これを使えばアニメ『コジコジ』のエンディングに出演したような写真が撮れる。展示会に来た記念にぜひ撮っておきたい。

スクリーンにはエンディングの映像が
コジコジ愛をくすぐるオリジナルグッズたち
たっぷりと『コジコジ』の世界にふれられる展示を堪能したあとは、ミュージアムショップにも立ち寄ってほしい。
展示会のイメージカラーのネオンイエローとネオンピンクを使った雑貨や、コジコジのイラストがあしらわれたブーブークッションなど、ユーモアあふれるアイテムが所狭しと並ぶ。
その中でも注目したいのが、気持ちが高ぶるとお茶(おいしい)が沸いてしまうキャラクター・やかん君にちなんだアイテム。
お茶を飲むときに欠かせない“小ぶりの湯のみ”が販売されているのだが、その柄なんと30種類! どの柄にするか永遠に悩んでしまいそうな数だ。さらに、本物のやかんにやかん君の顔を描いたフィギュアも登場!







味覚で楽しむコジコジワールド
オリジナルグッズに大興奮した先には【カメ吉茶屋】なるものが出現! ミュージアムカフェが期間限定で、茶の道を追求するカメの精・カメ吉が夢見る茶屋へと変身しているのだ。
メニューももちろん、コジコジの世界をイメージしたものばかり。
馬鹿メルヘンな展示会を振り返りながら、ほっとひと息ついてみよう。

写真右下の“カメ吉茶屋 日本茶セット”には、カメ吉とやかん君の絵柄が描かれた豆皿がついてくる

茶屋の奥には、茶屋らしさあふれるフォトスポットもある
大人も子供も楽しめるワークショップ開催!
『PLAY! MUSEUM』の上階にある屋内広場『PLAY! PARK』(別料金)では、シュールで楽しいワークショップが開催中だ。

【おかめちゃんの問答えんぴつ飼育場】
ここでは、原作マンガの中で、ふくわらいの精・おかめちゃんが夢中になっている“問答えんぴつ”を作ることができる。
作ったえんぴつは、実際にプランターに植えることも可能。

会期終了の7月10日(日)までに、どれだけの問答えんぴつが顔を並べているのかに注目したい

【ゲランがほしくなるサインをつくろう】
太陽の城の王様・ゲランは、有名人のサイン集めが趣味。そんなゲランが“ほしい!”と思うようなサインを色紙に書くユーモアあふれるワークショップ。
色紙はどんどん展示されていくので、これもまた会期終了までにどれだけのサイン色紙が集まるかも見どころだ。
たくさんのお楽しみがつまった展示会『コジコジ万博』は、『PLAY! MUSEUM』(東京・立川)にて7月10日(日)まで開催している。
入場料は一般1500円、大学生1000円、高校生800円、中・小学生500円、未就学児は無料。
そのほか割引制度や開館時間など詳細は公式サイトで確認を。
『コジコジ万博』公式
https://play2020.jp/
COJI-COJI 新装再編版
さくら ももこ

2018年12月25日発売
660円(税込)
新書判/256ページ
978-4-08-867527-5
コジコジは、メルヘンの国の自由気ままな宇宙生命体。
個性豊かな仲間たちと暮らす毎日はヘンな事件ばかり…?
1巻にはコジコジがこの世に初めて登場したおはなし
「コジコジ メルヘンストーリー」を初収録。
2巻、3巻ともに、コミックス未収録の作品が読めます。
シュールでキュートでなんだか深い、ナンセンスワールドへようこそ!!
(全3巻)
5月2日(月)発売の『MOE』では、『ちびまる子ちゃん』をはじめ『コジコジ』など、さくらももこが描いた世界の魅力を32Pにわたり特集している。さらにとじこみ付録として、『ちびまる子ちゃん』&『コジコジ』のユーモアいっぱいな35連発シールも。さくらももこファンは必読だ。
また、「ちびまる子ちゃん」と「コジコジ」がサマンサグループとコラボレーションした「MOMOKO SAKURA COLLECTION」の発売が決定したとのことで、公式オンラインショップの特設ページが公開されている。

【「MOMOKO SAKURA COLLECTION」公式オンラインショップ特設ページ】
URL: https://www.samantha.co.jp/shop/e/el2204pcz/
©さくらももこ
©︎さくらプロダクション
©さくらももこ/dwarf
撮影/和田篤志
取材・文/上村祐子