人気SNS『Twitter』は4月、イーロン・マスクによる買収案に合意したことを発表しました。買収後は株式が非公開化され個人所有に近い形態となることも、あわせて明らかに。
もともと世論を騒がせる発言の多かった億万長者、マスク。個人所有というキーワードも手伝い、「Twitterは変化するのではないか」という不安が、世界中に広がりました。すでにTwitterから、他のSNSへ移行するユーザーも増えてきています。
そうした動きの中、移行先として再注目を集めているのが『Mastodon(マストドン)』です。
イーロン・マスクによるTwitter買収で再び注目を集めるMastodon(マストドン)とは?
イーロン・マスクによるTwitter買収後、その移行先として一部で再注目を集めているSNS、Mastodon(マストドン)。そもそもMastodonとは? 以前の流行時にたてられたサーバーたちがその後どうなったのか? Twitterの移行先になりうるのか? などを5年以上にわたって実際にMastodonサーバーを運営してきた、のえる氏が語る。
Mastodonとは
Mastodon(マストドン)はTwitterと同じような短文投稿型のSNSです。
Twitterとの違いとして、
・ 広告やおすすめを挟まない
・ 文字数制限が500字(Twitterは140字)
・ 投稿ごとに公開範囲を指定できる(Twitterはアカウントごとに指定)
・ 「ネタバレ注意」などの警告とともに内容を伏せられる(Twitterは外部サービスが必要)
などの特徴がありますが、一番大きな違いは、Mastodonは無償で自由に設置できることです。
そのため個人から企業まで、さまざまな立場の運営者が、特色を持ったサーバーを設置しています。現在、世界には約3,000ものMastodonサーバーが稼働しているのです。
それぞれのサーバーは運営者やルールが異なり、独立して運営されています。また『連合』という仕組みで相互に接続されています。サーバーが違っても、お互いをフォローして、投稿を受け取ったり返信したりできるわけです。
Mastodonの開発者はTwitterの問題点として、
・ 規模が大きすぎて画一的なルールで問題を解決できなくなっている
・ 利益のために株主や広告主を優先しなければならない
・ 買収や破綻のリスクがあり、万一のときに代わりが効かない
などを挙げています。
これを解決するために、管理しやすいサイズのサーバーに分散し、かつサーバー同士を相互につなげ、一つのSNSとして機能するように設計されています。なお、運営にはサーバー代が必要ですが、無理のない規模とすることで小さな負担にとどめることができます。これも分散の強みです。
さて、Mastodonはどのように発展してきたのでしょうか。
ドイツで生まれたMastodon
Mastodonは2016年に、ドイツで誕生しました。
当時24歳の学生だったEugen Rochko(オイゲン・ロホコ)さんが、Twitterの不可解なアカウント削除や買収の噂をきっかけとして代替する仕組みの必要を感じ、開発に着手。最初のサーバーであるmastodon.socialの運営を開始。この活動には、多くの賛同者が集まりました。
開発・運営費は寄付により支えられ、開発者が世界中から集い、Mastodonは国際的なプロジェクトに成長しました。日本からの貢献者も多く、筆者も個人開発者として参加しています。
mastodon.socialは、開発者自身が運営する旗艦サーバーとして、また新規ユーザーを受け入れる窓口として、現在も人気のサーバーです。

mastodon.social https://mastodon.social/about/more より
日本におけるMastodonの流行と mstdn.jp
日本での大きな流行は、最初期にMastodonの存在に気付いた一人、当時22歳の学生だったnullkal(ぬるかる)さんの個人サーバーmstdn.jpから始まりました。最初の立ち上げは2017年4月11日。メディアに紹介されて火がつき、数万人のユーザーが殺到します。急激に大きくなったサーバーに対し、さくらインターネットが全面的にサーバー支援し、またドワンゴが運営を支援することとなりました。
その後、合同会社きぼうソフトに運営譲渡ののち、合同会社分散型ソーシャルネットワーク機構へ。2020年7月1日、Sujitech, LLC.のもとへ渡り、現在に至ります。
なおSujitechへの運営譲渡が決定する前に、一度閉鎖のアナウンスがありました。これを報じた記事が大きく拡散。『マストドンはサービス終了した』と、多くの人が認識してしまった経緯があります。
一度誤って伝わったイメージは、なかなか覆せないものです……。
イラスト投稿者の楽園 Pawoo
mstdn.jpの登場からわずか数日後、2017年4月14日にピクシブ株式会社によるPawooというサーバーが立ち上がりました。イラスト投稿者をターゲットとしており、瞬く間にユーザー数世界トップのMastodonサーバーとなりました。
イラスト投稿はTwitterにおいて、さまざまな制限を課されてきたコンテンツです。その不自由な経験から、TwitterとPawooの両方にアカウントを持って『保険をかけた』SNS運用をする利用者が多く見られます。
2019年12月2日、ピクシブ株式会社から株式会社クロスゲートへ譲渡・株式会社ラッセルに運営移管となり、Mastodonとしては異例の広告表示を行うに至りましたが、現在もユーザー数世界一のサーバーとして賑わっています。

Pawoo https://pawoo.net/ より
ニコニコ動画の friends.nico
株式会社ドワンゴもMastodonへの対応は非常に素早く、2017年4月19日にfriends.nicoが設置されました。
ニコニコ動画からつながり、Mastodonを知った人も多かったようです。mstdn.jp、Pawooに次ぐ大規模なサーバーとして人気を博しましたが、2019年4月28日に運営終了となりました。
公式な後継サーバーはありませんが、friends.nicoの運営スタッフによるbest-friends.chatというサーバーが開設され、多くのユーザーが移り住んでいます。分散型のMastodonは、たとえ一つのサーバーがなくなっても、新たにサーバーを立てたり既存のサーバへ移ることで活動を継続できる、特定の運営に縛られない強みがあります。
Twitterからの移行先になりうるか?
もしあなたが、Twitterのあり方に疑問を感じ、移行先を探しているなら——営利企業が運営する別のSNSに移っても、同じ疑問を抱えることになるでしょう。その場合の移行先として、Mastodonは非常におすすめできます。新しい世界へようこそ。
しかし、Twitterのクローンを求めているなら。Mastodonは、全くご期待に添えないでしょう。人々が不満を持ちつつもTwitterに留まるのは、多くの人とコンテンツが集まっていて、最大の反響を得られる場であること、そこに友人とのコミュニティが形成されているからです。
「最も人が集まっている」という事実には、大きな価値があります。巨大なるつぼであるTwitterの地位は、そうそう揺るぎません。またMastodonは、広告プラットフォームには決してなりえません。
この依存を脱するには、人々が意識的に行動する必要があります。
友人たちとのコミュニティは、ある程度申し合わせれば丸ごと移動できるでしょう。Twitterでしか実現できないことはTwitterで行いつつ、それ以外を移行するところから始めてはいかがでしょうか。
人々の移行が進み、ある臨界を超えたとき、大きな変化が起きるかもしれません。
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