50m先か、20m以下か。クマとの距離で「とるべき行動」は変わる

これだけやっても出合うときは出合う。出合う前とあとでは対策が違うので、両方知っておいてほしい。

まず、クマの攻撃には2種類ある。子や自分の身を守るための「防御的攻撃」と、狙って執拗に襲う「捕食的攻撃」だ。防御的攻撃なら応戦せずにやり過ごせることはあるが、捕食的攻撃なら反撃が必要なこともある。クマまでの距離ごとに、対応を挙げよう。

50m以上先に「黒いクマっぽいのがいるな」というときはどうするか。クマがこちらに気づいていなければ、できればその場から静かに立ち去る。背を向けずにゆっくり離れながら、来た道を戻る。下山路の先にいて引き返せないときは、安全な距離をとりつつ、当該の山がある自治体に連絡する。クマが移動しそうなら、十分に離れるのを待ってから下山路へ進むのも手だ。

20~50mほどの距離でクマに気づかれている場合、逃げたくなるがいきなり動いてはいけない。パニックで走りだして襲われた実例がある。大声を出したり急に動いたりするとクマを驚かせるし、走るものをクマは本能的に追いかけようとする。視線を合わせず、クマを視界に入れたまま、斜め後ろにゆっくり下がって離れる。近くに木があれば、その陰に入ることで、視力の悪いクマが「いなくなった」と認識して立ち去る可能性はある。

20m以下の近距離で出くわしたときに、クマが立ち上がったり鼻息を荒くしたりしていたら、驚いて興奮し、威嚇している状態だ。自分は脅威ではないと示すためにゆっくり後退するのが基本だが、かなり難しい。木などの障害物をクマとの間に入れれば、ひっかきによる攻撃は防げる。ただし噛みつきは防げない。守るしかない状況なら、地面にうつ伏せになって、首の後ろと急所を守る。

クマは人間の顔を狙ってくるので、顔と、それを守ろうとする腕や手にケガを負いやすい。うつ伏せになってクマを見ずに防御姿勢をとるのは非常に怖いが、これが推奨される姿勢だ。背中はザックで守れる。可能ならヘルメットを被っておきたい。

写真はイメージです
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最後の手段はクマスプレー。ただし「10m以内」まで引きつける必要がある

最後の手段はクマスプレーだ。10m以内に近づいてから噴射する。ある程度引きつけないと効かない。突進してくるふりをして直前で引き返すブラフチャージもあるし、スピードも速いので、スプレーを効果的に使うのはかなり難しい。使うなら対人用ではなく、クマ撃退専用品を選びたい。噴射時間は6~9秒、射程は5~12mほどで、価格は1万円前後だ。カウンターアソールト、SABRE、UDAPといったアメリカ製が有名だ。

ザックから取り出す余裕はないので、すぐに構えられるよう、ホルスターで胸の前や腰に装着しておく。定期的な買い替えが必要で、飛行機には持ち込めないし預けられない。条件は厳しいが、正しく使えば効果があると実証されている。モンベルではレンタルができ、グループで一本持つだけでも意味があるので、検討してほしい。