時速40~50kmで走り、木にも登る。襲われたら「逃げ切れない」
子連れの母グマには特に注意が必要だ。クマは冬眠中の2月ごろに出産する。母グマは子グマが2歳前後まで一緒に行動するので、子連れの母グマは年中見かける可能性がある。子グマを見かけたら、必ず近くに母グマがいる。2~4歳は独り立ちの段階で、好奇心が旺盛。人を見ても逃げないクマは、このあたりの年齢が多いようだ。
クマの武器は、鋭い爪と尖った歯。前足の爪は鉤のように大きく曲がっていて、木も登れるし、立ち上がって攻撃するときの武器にもなる。普通は人間を避けて行動するが、エサが足りない、突然出合ってびっくりした、挑発された、子グマを守る、人間の食べ物や人間そのものの味を覚えた、といった状況では、あえて人を襲うこともある。
感覚器については、嗅覚は犬よりも優れ、聴覚は犬と同程度とされる一方、視力は悪い。走るスピードは時速40~50kmと非常に速く、木登りも水泳も得意だ。要するに、身体能力は人間より格段に上で、いったん襲われると逃げ切ることはできない。だからこそ「出合わないこと」が何より重要になる。
クマ鈴は手軽。でも沢や風の音に「かき消される」
出くわしてからできることは限られるし、大ケガを負ったり命を落としたりする危険性は極めて高い。だから対策は、そもそも出合わないことに主眼を置く。
① 音を出して歩く 「人間がいるよ」とクマに気づかせて、離れてもらうための基本的な策だ。とはいえ、クマ鈴は手軽だが万能ではない。沢の音や風の音、登山者の足音に鈴の音はかき消される。できれば複数の音源を用意したい。定期的に声を出す、ラジオを鳴らす、手を叩くなど。特に見通しが悪い曲がった道やヤブの深いエリアなど、鉢合わせを避けたい。
このような場所では「おーい」と声を出したり笛を吹いたりするといい。トレイルランナーは、カーブや見通しの悪い場所では速度を落としてほしい。ばったり出合う確率をなんとしても下げよう。
② 朝夕の行動に気をつける 早朝に出て早めに目的地に着くのは安全登山の鉄則だが、日の出直後はクマとの遭遇リスクが高い時間帯だ。日程に余裕があるなら、明るくなってしばらくしてから歩き始め、夕方暗くなる前に行動を終える。早朝に出るなら、特に音出しを徹底する。自分の計画に合わせて判断してほしい。
③ 食べ物の管理を徹底する クマの嗅覚は鋭いので、食料はテントの外に出さないこと。テント内に入れる場合も密閉袋などを利用し、匂いを漏らさない。クマが出るエリアには、金属製のフードコンテナが置かれていることがある。硬くてクマには開けられないのでぜひ使ってほしい。匂いでクマを引き寄せないよう、ゴミも絶対に残さない。
④ 出没情報を確認する クマの出没情報は、都道府県のウェブサイトでも見られる。ヤマレコの山行記録や口コミにも情報がある。ただし、クマは一日に数キロ移動するので、「見かけなかった」場所に「いない」わけではない。安全の根拠にはせず、参考にするくらいがちょうどいい。特に見ておきたいのは、事件を起こしたクマや、人に慣れたクマといった、危険な個体がいるかどうかだ。
⑤ 可能なら複数人で行動する グループなら足音や話し声が自然に増えて、存在をクマに知らせやすい。ソロは自分一人分の音しか出せないので、音出しを意識したい。
⑥ クマを刺激しない 子グマを見かけたら近づかずに離れる。出くわしても、大きな音を立てたり石を投げたりと、攻撃の素振りを見せない。













