米国では小売も鉱山もAIで事業効率化

今ある仕事を前提にして、その仕事をAIで速くする。これは一番わかりやすいAI活用だ。でも、そもそも何のためにやっている仕事なのか。人間がやる必要があるのか。AIにやらせて人間は確認だけすればいいのか。それとも、その仕事自体をなくせないのか。そこまで戻って考えると、景色が変わってくる。

海外では、すでに仕事の流れそのものを作り直す動きが進んでいる。ウォルマートは、高度な数理最適化を使ってトラックの配送ルートや積み荷の組み方を決める仕組みを実運用し、2023年度に7500万ドルの節約につなげた。

米鉱山大手Freeport-McMoRanも、設備などのデータをAIで分析し、工場の設定を1時間ごとに変える仕組みを導入した。単一拠点では生産量が5~10%伸びた。

なんだか、また話がでかくなってきた。

「うちには鉱山もトラックもないよ」と思うだろう。私もそう思う。

ただ、やっていることを小さくすれば、普通の会社員でも同じ発想はできる。仕事を一つ選ぶ。その仕事を細かく分ける。どこを人間がやるのか。どこをAIに任せるのか。どこだけ人間が確認するのか。それを考える。基本はそれだけだ。

写真はイメージです
写真はイメージです

「それで、AIで仕事はどう変わったんですか」

日本企業を見ていると、生成AIそのものは入ってきている。でも、「それで仕事はどう変わったんですか」と聞くと、急に話が弱くなる。

メールを書くのが速くなった。議事録が楽になった。文章を要約できるようになった。もちろん悪くない。でも、その先に行っていない会社が多い。AIは入れた。でも仕事のやり方は昔のまま。人間がこれまでやっていた仕事の横に、便利なAIが一個置かれただけなのだ。

紙の書類をPDFにしただけで「DXしました」と言っていた会社と、あまり変わらない。せっかく電子化したのに、一度印刷してハンコを押して、それをまたスキャンする。AIでも同じことをやりかねない。

伊藤忠商事は「地に足をつけたAIX」という言い方をしている。私はこの言葉、けっこう好きだ。同社自身、AIXを目的化せず、「ビジネスありき・収益性重視」を基本思想としている。

「地に足をつけたAIX」を掲げる伊藤忠商事。AIXを目的化せず、「ビジネスありき・収益性重視」を基本思想としている
「地に足をつけたAIX」を掲げる伊藤忠商事。AIXを目的化せず、「ビジネスありき・収益性重視」を基本思想としている

AIを使えば偉いわけではない。AI推進室を作れば改革が終わるわけでもない。AI研修を1000人にやりました。利用者が5000人になりました。それで満足してしまうのは危ない。

「で、何が良くなったの?」

という話だからだ。