「阿部さんはコロナとかインフルの合併症で入院してる」

内田被告の刹那的な手口は、阿部さんと長年の友人で「おたからや名古屋栄店」の常連客でもあったA氏の証言で次々に明らかになっていった。A氏は阿部さんの生前、1500万円分のインゴット(金塊)や貴金属を持ち込み、代金は後日支払われる予定だったが、阿部さんと連絡がとれなくなったといい、当時、こう証言していた。

「店に電話をしたところ、内田容疑者の携帯電話に転送されて、彼女が出たんです。私はあの店に他に従業員がいたのも知らなかったので『そもそも電話に出てるあなたは誰ですか』という流れで彼女と連絡を取ったり、結果的には逮捕される2日前まで連絡を取り合っていたことになりますね」

内田被告(本人SNSより)
内田被告(本人SNSより)

A氏が阿部さんと最後に連絡を取り合ったのは「行方不明」になる直前のことだったという。

「最後に話したのは9月29日のお昼ごろ、阿部さんから電話で『今日の夜に(インゴットの)代金を持っていきます』と連絡がありました。約束を破るような人ではないのですが、その日の夕方に携帯に電話しても繋がらず、次の日も同様で、店にかけても出ない。携帯からは機内モードの『ただいま電話をお繋ぎできません』という音声が流れました。

その状態が10月4日ぐらいまで続き、その数日後に店の固定電話にかけてみたら転送になり、内田容疑者が電話に出たんです。彼女は『実は阿部さんはコロナとインフルエンザの合併症で国立病院に入院しています。私は知り合いで電話だけ対応させてもらっています』と説明しました。

実をいうと9月29日の少し前に連絡を取ったとき、阿部さん本人が『ちょっと風邪っぽいわ』って言ってたんですよ。彼は真面目でこれまで不義理をしたことは一度もなかったので、このときは阿部さんの体調を心配していたんです」

阿部さんが住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
阿部さんが住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)

このころまでは内田被告の演技も“順調”だったが、阿部さんの“代理”としてインゴットの代金を持参するうちに、付け焼き刃はすぐにボロボロと剥がれ始めた。A氏はこう続けた。

「僕が持ち込んだ1500万円分のインゴットなどの商品の代金が遅れるなら、商品を引き取りたいって内田に言ったんですよ。それで徐々に話を詰めていったら『お客さんのものだとは知らずに私が全部売っちゃいました』って認めたんです。

そうなると”なんで阿部さんの単なる知人が勝手に売ったんだ”ってなるじゃないですか。その辺からは完全におかしいと確信しました。10月の中旬ぐらいです。その後の内田は『明日返します』、当日になったら『もう1日、時間をください』の繰り返し。そのうちに逮捕されて、結局お金は返ってきてないです」