オーディション落選は当たり前!?

ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_1
長女のユズ。現在16歳。写真は11歳のときのもの。

ハリウッドでモデルや映画出演を目指し努力を続けている我が家の子役たちには、落選エピソードが満載。中でも特上は、配信大手の大作のメインキャラクター選抜で、最終候補3人に残った長女ユズの話だ。

カメラのレンズを怖がらないユズにとって、写真広告は得意分野。1歳の誕生日の直後、初めて受けたオーディションでアパレルメーカーの広告の仕事をもらって以来、演技力をあまり必要としない、自然な様子を写し出す企画で採用され続けた。なんといっても、お昼寝から目覚めた直後に、ベビーカーからスタスタとカメラの前に向かいニッコリ笑えるびっくり赤ちゃんだったのだ。

ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_2
ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_3
過去には白雪姫のおもちゃのパッケージに起用されたことも
ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_4
ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_5
こちらはMacy'sの広告キャンペーンに起用されたときのもの

だが、セリフのある役のオーディションを受け始めるようになると、ユズに試練が訪れた。レンズを向けられるとポーズをするのがクセになっていたため、自由な動きはどうもぎこちない。片方の手と足を同時に前に出して歩くようなガチガチっぷり……。そんなユズが13歳、学年末で忙しい5月の中ごろ、Netflixのドラマのオーディションが舞い込んできた。原作はベストセラー小説で、うちの本棚にも並んでいる。「これは大きなチャンス!」と母子で気合を入れた。

セルフテープの出来はいつになく上々。1週間ほどして2次オーディションの連絡があり、数々の製作会社が軒を連ねるカルバーシティへ。そこではなんと、キャスティング・ディレクターから「演技指導を受けさせて、うまくできたら最終審査に送り込みたいの」と直々の言葉が。

ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_6
キャスティング・ディレクターのアンバー・ホーンさんと控室で談笑するユズ(右)と活躍中の子役さん(左)

ご紹介の演技コーチに連絡し、「これはディレクターとグルの詐欺なのでは……」と疑うほど高額の代金を払ってレッスンを受けた結果、ユズの演技は見違えるほどよくなった。さて、いよいよファイナルの読み合わせオーディションだ。

ハリウッド子役が直面する天国と地獄。我が子がNetflix全米1位ドラマに出演するまで_7
演技の特訓を受けたハリウッドのオフィスで

当日。ロビーに着くや否や、母子ともども怖気付いた。まるで妖精のような6、7人くらいの女子が小走りでやってきてユズを取り囲んだのだ。ふわっふわのアフロヘア、透き通るような金髪、漆黒ストレートのロングヘア、見た目はそれぞれ違ってみんなスタイリッシュ! 照明が当たっているかの如くキラキラしている。

一方のユズは、ラフな格好で、まとまりのないくせっ毛を何とか束ねている状態。業界風な自己紹介と握手攻撃に、「場違いなところにきた」とでも言うように、ユズの顔が引きつっているのが少し離れた場所からも見て取れる。

よくよく見渡すと、5人のキャラクターごとに3人の候補がすでに選ばれていた。かなり知名度のあるもう1人の子役さんがユズのライバル。目の前にいるのは、ジュリア・ロバーツの出演作品でインパクトを残したあの女の子ではないか。手渡されたばかりの新しい台本を必死に読んでいるのはうちの子だけ。みなさん余裕ということか。

女子たちはグループに分かれ、プロデューサーらの待つ部屋へと消えていった。どれくらい時間がたっただろう。気がつくと、半べそをかいたようなユズがそばに立っていた。「帰ろう」とつぶやいたその様子から、この数日間の取り組みが実を結ばなかったのだと悟った。

ユズはこの日、親の私が知らない世界に足を踏み込み、ノックアウトされた。新しい台本を覚えきれず、他の子役との実力の差を見せつけられ、プロデューサーの厳しい目に晒された。キャスティング・ディレクターは、緊張でセリフが出てこないユズに助け舟を出し、何度かチャンスをくれたと言う。「今日の経験を次に生かそう」。帰りの車中で話せるのはこれだけだった。