――初対面の時のエピソードは覚えていますか?
吉田)2人に出会ったタイミングはそれぞれ別です。最初MySpace※で澤部君のスカートを知って。そのあと、高円寺のライブイベントでスカートと対バンしました。そしたら澤部君がTwitterで「トリプルファイヤー良かった」って言ってくれて、「この人となら仲良くなれるかもしれない…」と(笑)。
澤部君は既に他のバンドとも繋がりがある感じで、俺はマジで誰とも関わりがなくて、友達がいない感じだったから…。
川辺、澤部)(笑)。
――まさか3人の中で吉田さんがインタビューの口火を切って下さるとは思っていませんでした(笑)。
吉田)二人の後に喋って、二人より面白くなかったら「クオリティ下がったな」って思われるから。
川辺)そういう戦略なんだ(笑)。
吉田)川辺君とは、この3組で開催したイベントで出会いました。
――ちなみに3人が出会うきっかけとなるそのイベントは、どなたが最初に開催されたのですか?
澤部)僕ですね。87年生まれのミュージシャンがその頃周りにそこまでいなくて、「同い年のバンドと仲良くなりたい」みたいな感じが最初で。
川辺)下北だったっけ?
吉田)そう。下北のライブの後の打ち上げで、「ここでカマさないと仲間に入れない」って頑張って喋って。その流れで俺が川辺君に膝枕したら、「なんかやべぇ奴だな」って周りのみんながなったのを覚えてる。
川辺、澤部)(笑)
――インディーズ三銃士と呼ばれることに対してどう思われますか?(※スカートは現在インディーズではなくメジャーレーベルに所属中)
澤部)それは面白半分なんでね(笑)。
吉田)「三大〇〇」とかだったら、「違うよ」って意見が出ると思うんだけど、「三銃士」って言われても、「あ、そうなんだ。」みたいな(笑)。
澤部)比較のしようがないし(笑)。
川辺)ダサすぎるから誰も「三銃士」になりたいとは思わないもんね(笑)。

スカート・ミツメ・トリプルファイヤー、東京インディーズ三銃士のこれまでとこれから
インディーズ三銃士と呼ばれ、東京の音楽シーンを引っ張ってきた3バンド、スカート・ミツメ・トリプルファイヤー。彼らによるライブイベント「第七回 月光密造の夜」が、6月26日に東京・Spotify O-EASTで開催される。大きく異なる音楽性ながら、駆け出しの頃から現在までなぜか共鳴し続ける彼ら。5年ぶりとなる同イベントを前に、昔からのお互いの印象・今後の展望を聞き出した。
〜澤部・川辺・吉田による青春対談〜

――皆さんそういうご認識なのですね(笑)。
お互いのバンドの、一番好きな曲を教えてもらっても良いですか?
吉田)ミツメは『number』っていう曲があって、“どこにも行ききらず、ずっと続いていく” 感じが好きですね。スカートは『月光密造の夜』が好き。
澤部)ありがとうございます。曲名は、元々8年くらいやっているイベントのタイトルで、良いタイトルだからそのまま曲にしちゃおうって。
吉田)あ、曲が後なんだ。その言葉は何か元ネタがあるの?
澤部)稲垣足穂ですね。『月光密造者』っていう短編があって。
川辺)僕は、トリプルファイヤーは『質問チャンス』ですね。「映画の中で、主人公が迷い込んだ変な部屋に、謎の司会者吉田が登場」みたいなイメージ。トリプルファイヤーの初期の曲なんですけど、既に完成してる感じがあって、「めっちゃすごいな」って当時思いました。
吉田)アレが好きな人初めて聞いた。
一同)(笑)。
川辺)スカートは、最近だと『花束にかえて』ですね。最初の部分が一回しか出てこないのとか、コード進行がわりとビターな感じで、良い意味で歌がウロウロしている感じとか、すごく好きですね。
澤部)ありがとうございます。嬉しい。
ミツメは『リピート』かな、ギターがめっちゃ最高。あとは『Basic』も良いなって。この間STUTS君に会って、「アレ最高だよ」って言ったら、「僕も気に入ってます」って言ってて、それも含めて「良いな〜」って更に思いましたね。
川辺)あはは。そっか、この前の“POP YOURS”※で会ったのか。
澤部)そうそう、幕張メッセでね。トリプルファイヤーは、今だったら『相席屋に行きたい』かな。ワンマンの終わりの方で演奏してて、かなりTalking Heads的なアフロな感じで、前奏が結構長いんだよね。で、「今の自分は果たしてこれで良いのだろうか?」みたいなことを歌い出したと思ったら、その後「相席屋に行きたい」って。まだ音源になってないんだけど、ライブで観た時はホントに衝撃でした。
吉田)嬉しいです。

吉田セレクト
ミツメ『number』(アルバム『ささやき』2016年)

吉田セレクト
スカート『月光密造の夜』(アルバム『アナザー・ストーリー』2020年)

川辺セレクト
トリプルファイヤー『質問チャンス』(アルバム『エピタフ』2015年)

川辺セレクト
スカート『花束にかえて』(アルバム『トワイライト』2019年)

澤部セレクト
トリプルファイヤー『相席屋に行きたい』(未発表)

澤部セレクト
ミツメ『リピート』(アルバム『VI』2021年)
――バンド活動の駆け出しだった20代前半の若い時に、将来に対するイメージはありましたか?
吉田)いや、まず人生についてそんなに考えてなかったですね。
川辺)音楽をやっていきたいとは考えてたけど、どうなるのか分からんっていう感じでした。
ちょうど「CDが売れない」と言われてた時代で、「メジャーに行ってもなあ…」みたいなバンドも周りに増えてて、あんまり先のことは見えてなかった気がしますね。
澤部)僕も正直そんなに先のことは考えてはなかったですね。
――では、これからインディーズシーンで音楽を始める人に向けて何か一言、と聞かれたら。
澤部)まあ絶対やめた方が良いですよね(笑)。
一同)(笑)。
澤部)これまでたまたま続けられたようなもんなんで、僕から言えることは無い気がします。ただ、あえて言うんだったら「年上の言うことは聞くな」ってことですかね。僕らの時もそうだったけど、やっぱり10個上くらいの人ほど、見当違いなことを言うよね。
川辺)そうかも。じゃあ今(自分達は)見当違いの真っ只中にいると。
澤部)だから気をつけようと思ってます。
吉田)僕の個人的な体験で言うと、「周り的にこういうのが良いんだろうな」みたいなことを上手くやろうとして、全然出来なくて。逆に自分が良いって思う方に進んだ方が、結果としては好きになってくれる人が多かった。だからそっちの方が良いんじゃないかと思う。
――貴重なアドバイスをありがとうございます。この3バンドでのイベントは5年ぶりの開催になると思いますが、それぞれの想いをお聞きしても良いですか?
澤部)まともなブッキングだったら組み合わせないような、全然音楽性が違う3組で、はっきり言って食い合わせが良いとは思えない。ただその食い合わせの悪さも楽しめるっていうのが、3組で10年近くやってきた自分達なりの結論ではある。ぜひその部分も楽しんでもらえたら。
川辺)まずは他の2組を驚かせたいっていうのがやっぱりあるんで、隠し球を用意して頑張ります。
吉田)隠し球、すげえ気になる。
――では、今後の展望をお願いします。
吉田))最近テレビで、あるバンドが「メンバーみんながそれぞれ 4 小節以上のデモを毎週作る」ということをやってて、それいいなって感じでちょっとやってみてます。まあ、俺が提案したくせに、既にちょっと提出が遅れちゃってるんですけど。
川辺、澤部)(笑)
川辺)今まで活動してきて、やっと上手く演奏できるようになってきたというか。まあちょっと遅いんですけど、そういう気持ちに最近なるんで、ライブを沢山やっていきたいですね。
澤部)僕は新しいアルバムを何とか今年中に出せるように、今曲作りを頑張ってるんで、それがまずは第一かな。
あとは、『トワイライト』っていうアルバムを3年前くらいに出してツアーを回った時に、「良い具合にライブバンドになれてきたんじゃないか」っていう手応えがあったんですね。それがこういう感じで(コロナ禍で)ご破算になっちゃったので、もう一度試してみたいとは思ってます。
――今後3バンドでのツアーや、3人だけでのツアーは考えたりしてしますか?
川辺)3人でツアーやりたいな。
澤部)前に3人で名古屋に行ったやつ、めちゃくちゃ楽しかった。
吉田)その時は僕の持ち玉が、中学校の時にコピーしてたバンドの曲しかなくて…。ホント情けない気持ちになりました。
川辺)(笑)
澤部)でもまたそれが良いんですよ。BLANKEY JET CITYとかをやってて。弾き語りなのに、ギターソロの部分になるとちゃんとギターソロ弾くんです。いまだに思い出すくらい、マジでめちゃくちゃ良かった。
川辺)じゃあ車で交代しながら3人で運転して行こうか。
吉田)免許取りましたんで。
川辺)あ、ブチ抜く吉田※だ。
一同)(笑)。
※MySpace…プロアマ問わず誰でも楽曲を発表することが出来るSNSサイト。今でこそ当たり前のサービス内容だが、リリース当時としては画期的な仕組みで、2005年から2008年にかけて全盛期を迎えた。
※POP YOURS… 2022年5月21・22日に幕張メッセで開催された、ポップカルチャーとしてのヒップホップをテーマにしたフェスティバル。
※ブチ抜く吉田…トリプルファイヤー・吉田によるYouTube番組
https://www.youtube.com/channel/UCvlwaqL3q7XCQMZkx90v2lg/featured
ライブ情報
『第七回 月光密造の夜 』6/26(日)
会場:Spotify O-EAST (東京都)
OPEN 17:00 / START 18:00
ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,500(ご入場時ドリンク代別途600円)
LINE UP スカート ミツメ トリプルファイヤー
TICKET 一般発売日 2022/5/13(金)10:00~
※チケットはチケットぴあ・ローソンチケット・e+ にて購入可能
編集協力/株式会社ロト(佐藤麻水)
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