漫画家として成功してよかったこと

――『かぐや様』『【推しの子】』の成功で、赤坂さんはおそらくもう生活には困らないと思うのですが、そうした中で、新たな創作に対するモチベーションはどこから湧いてくるものなのでしょうか。

面白い作品を作っていると、お金では買えないものがたくさん得られます。作家としての評価もそうですし、一緒に遊ぼうと言ってくれる人も出てきてくれます。

――たしかに赤坂さんは漫画家やタレントや配信者など、交友関係が広い。

僕が10万部も売れてない作家だったら、会えない人ばっかりだったと思っています。やっぱり著名な人は著名な人と繋がるので。それに、自分が何か担保できるものを作り続けなければ、気後れして、そういう人たちとは大手を振って関われない(笑)。

それと、作品がアニメになって、動いているのを見るのも嬉しい。頑張って描いた作品が面白くなければ、見えない光景があるんです。

――赤坂さんは市場分析も的確ですが、今の漫画界を見て、今後どのようになると考えていますか?

当たりジャンルのデッドコピーが続くと、一部のマーケットにしかアプローチできないものになっていきます。たとえば最近の「なろう系」が何度も繰り返されて、なろう系の要素だけを詰め込み、ストーリーとつながらない、そのジャンルを知らなければ読めない作品になっている。

漫画界にも同じことが起きています。一昔前のラブコメは、ヒットしたラブコメを見てラブコメを描く、デッドコピー作品が増えていました。ただ『かぐや様』では時代を前に戻し、もう少し地に足をつけ、「エンタメとはなんだろう?」とちゃんと考えて取り組んだ作品だと思っています。

――ジャンルに先鋭化することで、ターゲットを狭めているんですね。

当たりジャンルを追うことによって生まれる弊害は絶対あると思っています。僕は以前「エルフを主人公にしよう」と提案したんですが、編集のサカイさんからは「エルフがなんだかわかる人は少ないですよ」と言われました。

いや、そんなことないだろうと思ったんですが、確かに小学2年生がエルフを知っているかといえば知らない。おじいちゃん、おばあちゃんもそう。僕は知らず知らずのうちに読者を絞ってしまっていたんです。

ありものに乗っかった時点で、元ネタを知っている人しか相手にできないジャンルになってしまう。これはなるべく廃した方がいい。老若男女が読めるなど新規が入りやすく、それでいて純粋に面白いと思える作品を増やすことが、今後の漫画業界全体の課題だと思っています。

取材・文/徳重龍徳

【画像】本当に作画引退!? これで惜別なのか…赤坂アカの珠玉イラスト(すべての画像を見るをクリック)

『かぐや様』赤坂アカが明かす漫画家引退の真相「どうしても描けない絵がある」_4
すべての画像を見る