中国にとっては帰国後の岩屋氏の発言まで好都合

岩屋氏は10月2日の地元・大分での会見で、政治局員2人との接触が実現したことを、対話が途絶えていた状況からの「一歩前進」と評価した。訪問も、あくまで小さな環境整備や改善のきっかけづくりと位置づけている。

接触そのものに意義を認める考え方は理解できる。だが、それだけで、懸案の解決に向けてどこまで前進したかという疑問への答えにはならない。

待遇も、前年と比べれば印象が変わる。2025年6月3日、同じ団体の会長だった河野洋平氏の訪中団を迎えたのは李強首相だった。翌4日には王毅氏が会っている。前年も2日続けて有力者が対応し、今回は登場しなかった首相まで出てきていた。

今回は高市首相の台湾有事答弁後に関係が悪化した状況での接触であり、単純比較はできないとはいえ、会談相手が2人いたという数だけで、今回を特別扱いと持ち上げるのは無理がある。

訪中の直前、9月24日の米中首脳会談では、トランプ大統領が習近平国家主席に日中対話の必要性を伝えたとロイターが日本政府関係者の話として報じた。訪中日程は9月11日には最終調整中と報道されており、訪問計画自体は米中首脳会談前から存在していた。

私の見立ては、予定されていた訪中が、中国の対米アリバイにも使える接触だったというものだ。もっとも、中国側が実際にそう位置づけたかは確認できない。高市政権への要求を下げず、日本の元外相とは話していると示せる。日本側にも譲る意思を持つ政治家がいると印象づけるには、帰国後の岩屋氏の発言まで好都合だったのではないか。

「日本が譲らないせいで問題が長引く」という中国側の理屈を助ける

岩屋氏の訪中は、中国からすれば飛んで火に入るなんとやら…といったところか
岩屋氏の訪中は、中国からすれば飛んで火に入るなんとやら…といったところか
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中国は民間交流を政府間関係の促進につなげる発想を公言している。前年の河野氏との会談で、王毅氏は「以民促官」を日中関係の成功経験と評価した。民間交流を通じて政府間関係を促進するという意味だ。

今回の会談発表でも、国貿促などに日本を正しい選択へ導くよう求めている。中国政府が望む方向へ日本の政策を動かす役割を、友好団体に期待していると読める。

経済交流の看板を掲げた場で、日本の指導者に台湾を巡る言動の是正を求め、歴史認識や中国への見方まで注文をつける。これが中国側による王毅氏の会談発表の中身だ。

岩屋氏も、日本への「新型軍国主義」という非難を控えるよう求めている。中国の物言いの問題を知っていた人物が、帰国すると日本側に原因があると語る。その発言を、中国政府が高市政権への要求に利用した。

首相の答弁を批判する自由と、中国の責任転嫁を助ける発言への批判は両立する。中国が不満を持ったことを、その後に中国自身が選んだ対応の免罪符にしてはならない。

外交上の対立があっても、対話を続けるか、貿易を制限するかは中国政府の判断だ。岩屋氏が中国側の対応まで正当化したとは確認できないが、原因は日本にあるという言葉は、日本が譲らないせいで問題が長引くという中国側の理屈を助ける材料にされかねない。