「お金は『推し活』に使いたい」と言われたら…

なぜならこどもNISAは、法的に「子どもへの贈与」が完了したお金を投資する制度だからだ。それらは親のお金ではなくなり、「子どもへ贈与済みの資産」となる。

日本証券業協会が2026年6月に公表したNISAのガイドラインでは、18歳未満のNISA口座に関して「資金は、厳に口座開設者本人に帰属する資金に限定される必要がある」と明記されている。さらに、親が資金を拠出する場合においても、それは「未成年者に贈与済みの資金」であり、親に帰属するものではないことを確認する必要があると定めている。

つまり、親が学費のつもりで毎月5万円を入金したとしても、それは「親の資産を子どもの名義で運用している」状態ではない。親から子どもへ贈与されたものとみなされ、所有権は完全に子どもに帰属するのだ(これは中田氏の動画でも説明されている)。親は法定代理人として、あくまで「子ども自身の資産」を管理しているに過ぎない。

そして、資金の所有権が子どもにあるという事実は、将来、学費として資金を払い出す際に実務的な障壁となる可能性がある。

こどもNISAは原則として12歳以降であれば、教育費や生活費など「子のため」に使う場合などに限り、非課税での払い出しが認められている。しかし、金融庁の制度設計によれば、親権者が払い出しを行う際には「資金の使途が子のためのものであり、子が払出しに同意したことを示す書面」を金融機関に提出する必要がある。

親が「これは学費だから」と主張しても、子どもが「この投資信託は使いたくない」と拒否すれば、親の判断だけで払い出すことはできないのだ。

さらに子どもが18歳になる年の1月1日になれば、特別な手続きなしで成人向けのつみたて投資枠へ自動的に移行する。そして18歳になれば、そこまで認められていた親の財産管理権限は、完全に消滅する。

いざ大学の学費に使おうとしても、子どもに「これは私のお金だから、学費ではなく、車を買うのに使う」「推し活に使いたい」と言われてしまえば、それを拒否することはできない。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

この問題に対し「きちんとお金の教育をすればいい」という意見もあるだろう。たしかに親からの金融教育が金銭行動の改善に関連することは、18〜21歳の大学生1511人を追跡した研究など複数のデータで指摘されている。だからこそ「これは誰のお金か」「何のために使うのか」を親子で話し合う必要がある。

しかし、ここには最大のジレンマが存在する。投資の最大のメリットである「複利による時間的効果」を生かすためには、判断材料が全くない乳幼児期から積み立てを始めるのが合理的になる(こどもNISAはこの複利で増えた分はすべて非課税だ)。つまり、早く始めるほど運用上は有利になる可能性があるが、早く始めるほど「18歳時点で資産を堅実に管理できる人間に育っているか」を予測するのが困難なものとなる。