「背中を押すことができたら嬉しい」
自身の難聴を公表し始めたころ、SNSでの動画投稿も始めた。
「ダンサーとしての認知度も上げたいと考えたんです。……当初は、何をやっていいのかわからなくて迷走していましたね(笑)。
でも、コメントで『自分の弱いところをきちんと言えてかっこいい』と言われた時は、“難聴”と打ち明けてよかったなと。どこか重く感じていた心が一瞬で軽くなって、安心したのを覚えてます」
耳が聴こえないにもかかわらず、なぜあれほど音楽に合わせて踊れるのか——。ダンス動画を見た多くの人が抱く疑問に、彼はこう答える。
「動きはすべて『目で見て真似する』ことから始まるんです。音を聴いて身体を動かすのではなく、まず振り付けの形を目で覚え、あとから『ここでこの動きをするんだな』と、(自分の中での)音を重ねていく」
スタジオでの練習では、床に置いたスピーカーの振動を頼りにすることもあるが、基本はあくまで視覚が軸になる。こうした感覚は、“聴こえるダンサー”との決定的な違いだろう。
音に合わせて強弱を変える健聴者のダンサーに対し、ゆうきさんはダンス全体の流れとテンポ、わずかに感じる振動を頼り強弱をつける。
「僕の感覚では“自分の身体から音を出している”感じ。『身体から音が見えるみたい』って言われたこともあって、自分自身が楽器になったような……そんな感覚です」
そう楽しげに話すゆうきさん。自分には聴こえない音を、自分の身体を使って奏でる。そんなゆうきさんの発信は画面を越えて多くの人に感動を与えるも、中には、心ない言葉が届くこともある。
《話し方やばw、耳聴こえないならそんなことしないで家で大人しくしてて》
そんな言葉を目にしても「あんまり気にしない。コメントをもらえたこと自体がありがたい」と、話した。
「世の中にはいろんな考えを持ついろんな方がいますし、様々な意見を持つこともその方の自由なので、今の段階ではそこまで気持ちが落ち込むことはないです。もしそういった言葉が増えたとしても、自分の周りに感謝しながら自分の目標に向かって挑戦し続けていきたいと思っています。
耳の聴こえない人だけじゃなく、何かに立ち止まっていたり、悩んでいたり、そんな人に自分のダンスが届いて、背中を押すことができたら嬉しい。誰かの勇気になれたことの方が僕にとって価値のあることだから」
静寂の中から紡ぎ出されるその力強いリズムは、障がいの有無を越えて、立ち止まっている人々の心にまっすぐ響き続ける。音のない世界で、彼は今日も踊る。「ただ誰かの勇気になりたい」と願いを込めて。
取材・文/木原みぎわ
(写真/廣瀬靖士)














