複数のメディアにリークするということもやりました

集英社オンラインでは今回、当時、梶村容疑者らとともに除染作業に従事していた男性に取材することができた。この男性は、横領事件については「(梶村さんは)派遣元のゼネコンから同僚に渡すように指示されて渡されたお金を、自分の懐に入れてしまったからと聞きました」とし、梶村容疑者の当時の様子を淡々と語り始めた。

「僕は当時福島県の楢葉町とかいわき市で、放射性物質を含んだ落葉や土砂の撤去をやっていました。梶村さんとは、その除染作業で知り合って2人1組で現場を回ったこともあります。彼は本当に柔和で口調も丁寧で、誰とでも仲良くできるタイプでしたね。ただ、当時から2面性というか、サイコパス的な雰囲気を感じさせるときがありました。

いつもはニコニコしてるのに、突然黙り込んで、不機嫌というか人を寄せつけないオーラを出すことがあったんです。当時の除染作業員には脛に傷持つ人も多かったので、この人も何か訳アリなんだろうなとは思っていました。私が接していたのはわずか2ヵ月程度の期間でしたが、それでもそんなふうに感じましたね」

梶村容疑者(梶村容疑者のSNSより)
梶村容疑者(梶村容疑者のSNSより)

それでも男性は梶村容疑者とウマが合い、やがていろんな話をするようになったという。

「詳しい場所は覚えてませんが、福島県内の食堂でメシを食っているときに、『これよかったら使って下さいよ』とブランド物のバッグをもらったことがありました。ブルガリだったかなあ、理由はわからないんですが、突然でしたね。それから名古屋の出身だとか、『親が医者をやっている彼女と付き合っている』とも言っていました。でも彼はわかりやすい『女好き』ではなくて、私が知る限りは風俗にも行ってなかったと思います」

仲良くなると、次第に除染作業員としての労働条件も話題に上るようになった。

「所属していた会社はお互い違ったのですが、2人ともひどいピンハネをされていたんですよ。本来なら日給3万円近くはもらえるところ、5000円とか6000円くらいしかもらえてなかったんです。そういった仲間を5、6人集めて梶村さんが先頭に立って複数のメディアにリークするということもやりましたね。特に朝日新聞のA記者さんが梶村さんと仲がよくて、よく相談していました。私もその方にレコーダーを渡されて、会社の上司の発言を録音したことがあります。見た感じ、梶村さんはAさんを女性として気に入っていたんでしょうが、Aさんのほうは彼を利用していたんでしょうね」

だが、後に男性は「梶村グループ」から撤退した。

処理水問題で再び注目される福島第一原発(共同通信)
処理水問題で再び注目される福島第一原発(共同通信)

「僕は会社からピンハネ分を払ってもらえることになったので、途中でそのリーク活動からは抜けました。梶村さんには『裏切るんですね』と言われたので、それ以降は一切関わることをやめました。そのうちに『朝日新聞』で記事になり、その後、『週刊新潮』でも記事になったことを知りました」