疑惑の店の「アジ」の味は美味かった! だが…

こうして「富津産の黄金アジ」をうたって営業している一部の怪しい飲食店と漁業関係者のあいだに深い溝ができてしまったという。

取材班が複数の地元漁師や飲食店を取材したところ、最も多く不満の声があがった“疑惑の店”は都内にあるアジ料理を専門にあつかう飲食店のA店だった。A店はこれまで多くの情報番組に登場し、「黄金アジ」の魅力を伝えている専門店で、ランチや夕食どきには行列ができることで知られる人気店だ。

店の看板メニューは「黄金アジ」を使用した「アジフライ」で、富津市から毎朝仕入れていることを売りにしている。SNSを確認した限り、不漁時期だった昨年12月からこれまで、「黄金アジ」が手に入らず営業を休んだという記述は見あたらない。

7月某日の晩御飯どきに記者が店を訪れると、店内はごった返していた。カウンターに座り、「黄金アジ」を使用した店の人気メニュー「アジフライ定食」を注文。出てきた「アジフライ」は確かに絶品だった。
そこで店員に「美味しいですね、『黄金アジ』を見せてもらえますか?」と伝えると、厨房にいた店員は得意気にアジを手に取り、見せてくれた。

A店の店員が見せてくれたアジ(撮影/集英社オンライン)
A店の店員が見せてくれたアジ(撮影/集英社オンライン)

だが、このアジ、尻尾こそほのかな金色だが、魚体はどう見ても黒色にしか見えない。本当にこれが「黄金アジ」なのだろうか?

記者が写真を撮り、後日、前出の漁業関係者に見せたところ、「これは黒アジだよ」と深いため息をつくのだった。

黄金アジ(撮影・集英社オンライン)
黄金アジ(撮影・集英社オンライン)
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A店はなぜ、地元で「黒アジ」といわれる「マアジ」を「黄金アジ」として提供しているのか?
ことの真相を問いただすためA店の店主を直撃した。

(♯2へ続く)

取材・文/集英社オンラインニュース班

#2