女性問題で絶縁状態だった
香川照之と父、二代目市川猿翁

そして今回の“猿之助一家心中事件”と少なからず関わりのある二代目市川猿翁も女性問題を抱えてきた。
1965年、元タカラジェンヌの浜木綿子と結婚し長男(香川照之)をもうけるも、香川がまだ1歳のときに初恋の人だった16歳年上の藤間紫(当時既婚者)と出奔。
その後、紆余曲折を経て2000年に猿翁と藤間は入籍するが藤間は2009年に逝去する。浜に引き取られた香川は猿翁とは絶縁状態だったが、生前の藤間はふたりの和解を望んでいた。
その願いが叶って猿翁と香川は和解。香川とその息子の政明は2012年に九代目市川中車と五代目市川團子をそれぞれ襲名。
そして同時に叔父にあたる猿翁からその名を引き継いだのが、現在の四代目市川猿之助だ。

市川猿之助(右から2番目)、市川中車(左端)ら澤瀉屋の面々
市川猿之助(右から2番目)、市川中車(左端)ら澤瀉屋の面々

「この襲名で猿之助は澤鷹屋一門を率いる立場になりました。
さらにいとこの香川の存在に触発される部分もあったのか、歌舞伎だけでなくテレビドラマやバラエティにも進出。人気、実力ともに歌舞伎界でもトップクラスとなっていった。
しかし、猿之助と香川にとっても絶頂期だった2022年8月、香川の銀座ホステス性加害問題が発覚したのです。
猿之助さんは落胆し、また、嫌悪感を隠さなかったそうです」(前同)
 
そして自身にもパワハラ・セクハラ問題が持ち上がり、今回の“心中事件”につながってしまったともいえる。

歌舞伎は血統や家柄が重視され、世襲制度によって代々引き継がれてきた伝統芸だ。「個人」の技量や人気だけでなく、「家」の歴史や格式もまた重視される世界。
そんな梨園の特殊性が、こうした数々の事件たちと無関係ではないはずだ。

取材・文/神林広恵
集英社オンライン編集部ニュース班