――今年のイッテンヨン(※新日本プロレスが毎年1月4日に開催する東京ドーム大会)の後、ツイキャスでたくさんマンガの話をしていらっしゃいましたね。ファンが挙げる大量のマンガタイトルのほぼ全てを知っていらして驚きました。
デスペラード 試合の話はいつも5分くらいで終わってしまいますね(笑)。聴いている人から本来は「次の対戦相手はこんな人どうですか」とか「どの団体が気になりますか」というコメントが飛んできてもいいはずなのに、大体マンガかアニメかゲームのコメントなんですよ。
どうも僕と中身が同じような人たちが聴いているようで(笑)。
――以前から徳弘正也先生のファンだとおっしゃっていましたが、その日のツイキャスでは「シリアスな話の流れでも必ず笑いを入れて、かつ作品を成立させている。それは技術がないとできないことだと思う」という意味のことを話しておられました。しかもそれは「新日本プロレスの田口隆祐選手のようだ」ともおっしゃっていて。
デスペラード 言いましたね。田口に例えたのは……彼はある時期から変な方向に覚醒して今の姿になったんですが、その前はすごくうまいけど、地味な印象の選手だったんですよ。
――今は、試合中にお尻を使った動きなどでたくさん笑わせてくれる選手というイメージが強いですね。
デスペラード 以前は「受け身をとるタイミングも攻めるタイミングも、技の選択もうまい。すごい上手な選手だわ」と思っていたんです。でもいかんせん観客には伝わりづらいというか、玄人好みのような選手で。それが第69代のIWGP ジュニアヘビー級チャンピオンになった時から、急にバックステージコメントで「激オコ牛若丸」とか下ネタとか変なことを言うようになって、試合中も尻を使い始めた。
それを見て「覚醒した!」と思ったのと同時に、昔から大好きだった『ジャングルの王者ターちゃん♡』がポンと浮かんで。「あのマンガを見ているようだぞ?」と懐かしく思いました。
それくらい、僕が『ターちゃん』から受けた影響が大きかったということですね。あ、ターちゃんというキャラクターが田口そのままというわけではなくて、作品の空気を田口に感じるということです。
――「作品の空気」なのですね。田口選手も『ターちゃん』も、うまさがあるからこそおもしろく見られるのでしょうか。

新日本プロレス エル・デスペラード、徳弘正也作品とプロレスを語る(その1)~『ジャングルの王者ターちゃん♡』の空気を感じた、あるレスラーとは?
新日本プロレスのジュニアヘビー級チャンピオン、エル・デスペラード。レスラーとしての高い実力ではもちろん、その優雅な振る舞いや試合後に発するコメントの的確さでも多くのファンを魅了している選手だ。さらに最近ではマンガ・アニメ・ゲームなどカルチャー全般への造詣が深い選手としても注目が高まっている。そんなデスペラード選手にマンガについて――特に以前からファンだと公言してきた徳弘正也作品について、たっぷり語ってもらった。(取材・文 門倉紫麻)
第1回
『ジャングルの王者ターちゃん♡』の空気を感じた、あるレスラーとは?


2021年12月8日BEST OF THE SUPER Jr. 28エル・デスペラードVS田口隆祐より。手前が田口選手。
デスペラード そうですね。僕が好きなものって、傾向が似ていて。例えばバンドだと「巨乳まんだら王国。」とか。彼らも下ネタばっかり歌うんです。でも「巨乳まんだら王国。」も『ターちゃん』も田口も、音楽やマンガ、プロレスの土台がしっかりある。その上で、アクセントやキャラクターの色として下ネタや笑いがあるのでおもしろいのだと思います。
徳弘先生は『ターちゃん』のようなギャグマンガ以外にも『バンパイア』(『昭和不老不死伝説 バンパイア』『近未来不老不死伝説 バンパイア』)とか『狂四郎』(『狂四郎2030』)のようなシリアスでダークな作品も描かれていますが、そういった作品にも必ず1ページに1つくらいのけっこうな割合でギャグが入ってくるのもすごいなと思います。
徳弘先生は「体がどう動くか」を常に考えて描いていると思う
――徳弘作品との出会いはいつですか?
デスペラード 小学生の時、『ジャングルの王者ターちゃん♡』より先に『新ジャングルの王者ターちゃん♡』のほうを読みました。たまたま読んでいた「ジャンプ」に載っていたんですけど、連載作の中で一番印象に残ったんですよね。キャラクターが扉絵でポージングしていたりするんですが、体が、とにかくかっこよかった。

『新ジャングルの王者ターちゃん♡』より。 ©徳弘正也/集英社
――確かに筋肉の描き方がすごく緻密ですね。ターちゃん以外のキャラクターの体もかっこいいです。
デスペラード めちゃめちゃいい体をした人たちがどうしようもない下ネタを言っているのが最高におもしろかったですね。アナベベの部族の言葉で、「チンポ チンポ」が「強い 強い」で「インモ ナガーイ」が「一番の戦士」っていう説明があって「これは……!」と(笑)。

『ジャングルの王者ターちゃん♡』より。 ©徳弘正也/集英社
――くだらなくて最高ですね(笑)。『新ターちゃん』は後半、シリアスな展開になりますね。
デスペラード 考古学者の博士が長く喋るシーンがあるんですけど、ターちゃんが「読者のみんなついてきてる……」って心配したり、ヂェーンが側でポーズをとったりするんですよ(笑)。それを見ながら、「作者は、『ジャンプ』ではシリアスな話だけじゃ読者はつまらないだろう、と思って描いているんだろうなあ」と思っていました。

『新ジャングルの王者ターちゃん♡』より。 ©徳弘正也/集英社
あと、徳弘先生の作品にはいつも本当に細かい情報が入っていて。『ターちゃん』ではゾウが1日にどれくらいの量を食べるとか、『黄門さま』(『黄門さま~助さんの憂鬱~』)では大名がどういうものだとかが描かれていますよね。『ふぐマン』だとかなり専門的な科学の話も入ってきて、正直半分くらいよくわからないまま読んでいましたが(笑)、すごいなと。

『黄門さま~助さんの憂鬱~』より。 ©徳弘正也/集英社
――キャラクターが誰かと戦ったりするシーンでは、デスペラード選手のようにご自身も戦える方は「この動き、自分にもやれるかな?」と思ったりされるのでしょうか。
デスペラード やれるかな?とは考えないですけど、人を殴る時や蹴る時の体勢は気になってしまいますね。人を殴る時は手だけじゃなくて、体のほかの部分も動いているはず、とか。
いくら話題になっているマンガでも体捌き(たいさばき)がおかしいと気になって話が頭に話が入ってこなくなっちゃうんですが、『ターちゃん』では違和感を覚えることがないんですよ。徳弘先生は、体がどう動くか、どうやって戦うかを常に考えながら描いておられるんだと思います。

『新ジャングルの王者ターちゃん♡』より。 ©徳弘正也/集英社
その2へ続く

50周年を記念して往年のシリーズ「HYPER BATLLE'22」を開催!
4月9日(土)の両国国技館大会ではエル・デスペラード選手のIWGP Jr.ヘビー級王座決定戦をはじめ、豪華6大タイトルマッチが実現!
https://www.njpw.co.jp/tornament/336018?showCards=1
取材・文 門倉紫麻
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