留置所で読んだ『男樹』、そして幼少期を過ごした団地へ

――あの……この部屋は……?
 

G PLANTS(以下同) 俺のヤサです。自宅は東京に別にあるんですけど、曲を作る時や遠隔のミーティングの時はここに来て篭ってます。誰にも邪魔されずに、集中できるんで。

――今回どうして取材を受けてくれたのでしょう?

集英社さん、大手じゃないっすか? 「少年ジャンプ」は読んで育ちましたよ。そんな集英社に取材されるなんて、子供の頃の自分にも聞かせたいし、自分の親も喜びますよ。なんなら発売日ガン無視で、何日も早くジャンプを先行発売してた籠原の某駄菓子屋の老夫婦にも伝えたいくらいです(笑)。

――漫画、好きなんですか?

幅広くそんな詳しいってわけではないんですが、ほんと全作読んだ!くらい好きな作者は、本宮ひろ志さんです。有名なのは『サラリーマン金太郎』ですよね。自分が特に好きなのは『俺の空』や『男樹』。一度、後輩に留置場の差し入れを聞かれて『新・男樹』をお願いしたら、『魁‼︎男塾』が入ってきて、年甲斐もなく怒っちゃったくらい好きですね(笑)。

メディアで「会いたい人はいますか?」って聞かれると、「漫画家の本宮ひろ志さんです」って答えたこともあります。ほら、あそこの本棚にも『男樹』あるでしょう。単行本でも持ってるけど、コンビニで新刷みたいなの見たら、ストーリー知ってても買っちゃいますね。

あ、もうここでインタビューやっちゃいます?

元バイト先のラーメン店でも本宮ひろ志漫画について熱く語る
元バイト先のラーメン店でも本宮ひろ志漫画について熱く語る

――いや、日が暮れる前に写真を撮りたいので、外に出て地元を案内してもらえますか。一通り見てまわったあと、またここに戻って、それでインタビュー……で、いいですか?

もちろん。じゃあ行っちゃいましょう。

そして、部屋を出て、G PLANTSの運転する車で、リリース前のデモ音源を聴きながら籠原をまわる。

最初に向かったのは、熊谷市営の団地街。中層4階建てが4棟並ぶ、昭和40年代に建てられた小さな団地は、調べたところ「家賃8900円〜」と、熊谷市の公式サイトに記載があった。団地の周辺は人通りも少なく、夕暮れの時間帯も相まって、どことなく寂しげな雰囲気が漂う。

地元の団地の一角
地元の団地の一角

「この辺は子供の頃からよく遊びに来てた団地で、当時はいろんな事情を抱えた人たちが住んでました。まぁ書けないことしかないんですけど、俺のまわりで言うと、たとえば………」

――たしかに耳を疑うような情報を聞いていると、団地の住民らしき二人組が話しかけてきた。

「ここで何やってるの?」

プロ仕様の立派なカメラと大きなカメラバッグを持つ写真家、編集者にライター、さらに体の大きい刺青だらけのG PLANTSと、何らかの撮影であることが一目でわかる4人の男たちがウロウロする姿は、明らかに目立つ。

「すぐそこの籠原小学校の卒業生なんです。子供の頃よく一緒に遊んでたここで、ちょっとビデオを撮ろうかと思って……」

G PLANTSが機転をきかせ、にこやかに事情を説明するが、二人組は納得せず、徐々に怒りを露にした。どんどん団地の住人が集まり、なかには怒声を上げ始める人も。一気に不穏な空気に変わったので、ここでの撮影は早々に切り上げ、近所の公園へ。