保護者は被害届を出し、厳正な刑事処分を求めていくと明言

Aさんの母親は事情を聞くと、非常に慌てた様子で半ばパニックになりかけた。件の動画を見せると、ときおり声を荒げて興奮し、「最低ですよ」と繰り返し、涙を流した。

取材班は動画に映り込んでいる撮影者の映像や、他の講師との会話などからMを特定し、母親に面識があるかをたずねた。

「まじですか……。あります。面談で……M先生……、そうなの……最低ですね。これは最低ですよね。ちょっと1点いいですか? 何もされてはないんですか、娘は。娘は何もされてないんですよね?」

取材班はその場で、母親にMの顔写真を見せ、確認を求めた。

塾から帰宅する途中のM
塾から帰宅する途中のM

「合ってます。100%これです」

そう答え、問題の4分53秒の動画を、母親は食い入るようにさらに見つめた。

「最低ですよ…最低ですよ。この動画をネットに載せてたってことですよね? もしかしたら住所わかってるんだから本当に襲われたりとかもありえますよね? もう本当に、本当に。これどれぐらい続きます? こんなことをずっとAは言わせられてるんですか?」

Aさんは今年になってから四谷大塚に通い始めたところで、Mが担任だったという。

「担任で理科の先生なんです。算数とか国語の先生もいるんですが、居残りのときなどは(教科に関係なく)M先生が見てくれてたんです。すごく遅い時間まで居残りになったこともあるんですが、でもそれはAが終わらなかったからと聞いていました。私も何度かお電話と面談で会ったことがあるんですけど、てっきり熱心でいい先生だと……」

また、Aさんと同じく、SNSで住所をさらされた別の女児の母親に該当画像を見せると、絶句し、声を震わせた。

「ホントにM先生ですか? 娘が勉強の相談をすると熱心に聞いてくれ、真っ先に行動してくれる先生なんです。本当に信じられない、なんてことを…」

ある母親はショックを受けながらも、被害届を出すことを明言、厳正な刑事処分を求めていくという。

この塾講師Mや、雇用主の四谷大塚は、実際にどの程度の罪に問われる可能性があるのか。
インターネットに関わる民事刑事の紛争や児童買春、児童ポルノに係わる法律に詳しい奥村徹弁護士(大阪弁護士会)に聞いてみた。

「お聞きした内容で刑事罰に問うとすれば、地域にもよりますが、迷惑防止条例違反を適用できる可能性があります。このところ顕在化しているアスリートの盗撮動画問題と一緒で、胸や股間部分をクローズアップするような、撮られて恥ずかしい画像であれば検挙できます。今年の3月にも全国女子駅伝で、出場した選手の下半身を望遠レンズなどで執拗に撮影したのは、卑猥な意図が明らかだとして、京都府警が撮影者の男を府迷惑防止条例の疑いで書類送検し、罰金刑になりました」

Mが投稿した塾内の別の動画。やはりローアングルで撮影されたり、女児にワイセツな言葉をいわせているシーンもあった(知人提供)
Mが投稿した塾内の別の動画。やはりローアングルで撮影されたり、女児にワイセツな言葉をいわせているシーンもあった(知人提供)

条例は地域ごとに異なるので一概にはまとめられないが、迷惑防止条例は通常、公共の場所を前提としている。だが現在は、学校の教室といった限定された場所でも適用する方向に進んでいるという。
奥村弁護士が続ける。

「ですから、塾の教室内での盗撮も、迷惑防止条例に問える可能性があります。逆に学校の教室等を規制していない地域では、迷惑防止条例に問えない可能性もあります。懲役や罰金などの罰則はそれぞれ都道府県によって異なります」