團子坊ちゃんは澤瀉屋の未来を背負って立つ、の人

「昼の部」で代役を務めることになった團子のことも、猿之助は普段から目をかけていたという。

「猿之助若旦那も團子坊ちゃんを可愛がっていたと聞きますけど、稽古場ではやっぱり師匠と弟子ですよ。猿之助若旦那が『團子、こうやらないとダメよ! もっと手を上げなさい!』と言えば『はい!」と返事しますからね。
團子坊ちゃんの代役の稽古も見ましたけど、あれはびっくりした、大したもんですよ。歌舞伎役者っていうのは、『この人が休んだら自分に役がまわってくるだろう』と予想して準備するものなんです。できませんじゃ通りませんからね。
その点、團子坊ちゃんは猿之助若旦那の稽古をよく見て学んでいたんでしょう。猿之助若旦那の面影も感じたし、短い時間の稽古だったのにとてもよい演技で、血を感じましたね。こんなこと坊ちゃん本人には言いませんが、澤瀉屋の未来を背負って立つのはこの人だなと感じました。自分はその時まで生きてるかわからないけど、その姿を見たいですね」

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明治座に掲示されたポスター内の團子

寿猿は亡くなった四代目段四郎にも思いを馳せ、こう語った。

「三代目猿之助さんがスーパー歌舞伎のセリフで死ぬことを『星になる』って表現したんです。その言葉がグッときて、それから自分は人がお亡くなりになることを『星になる』と言うようにしてるんです。だから旦那(段四郎)と奥さんも星になったわけです。
旦那と若旦那も稽古場ではプライベートの話は一切してなかったですよ。稽古場に来たら親子ではなく師匠と弟子の関係、無駄口はナシ。『孝彦それじゃダメだ! こうやるんだ!』という感じで厳しく指導されてました。二代目猿翁旦那も若旦那(猿之助)を可愛がってましたけど、稽古場では甥とか関係なしに厳しく指導されてましたよ」

寿猿は「夜の部」で猿之助の代役を務めることになった中村隼人についても触れながら、続けた。

「隼人さんも一生懸命頑張っていますよ。本来、若旦那と私と坊ちゃんで演じる場面があるんですけど、代役で隼人さんが入っても、直接言わずともちゃんと連携が取れてますから。
中車若旦那は猿之助一門の面々を集めて『こうなったモノはしょうがないから、みんなで頑張っていこう』と言ってくれました。心の中では色々と思うことがあっただろうけど、そこは一族の若旦那ですから、態度に出さず落ち着いた様子で鼓舞してくれたんです」

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2012年、猿之助襲名時の記者会見(写真/共同通信)
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最後に寿猿は、長い役者人生を振り返るようにこう締めくくった。

「(梨園には)20歳からいますから、もう73年ですかね。この間にこんな事件が起こるのは初めてですから、どうなっていくのかもわかりませんけどね。初代猿翁大旦那に20歳で拾ってもらって、猿之助一門の色々な方に稽古をつけてもらいましたから、今こそ先代達の恩に報いる時だと思ってます。中車若旦那と團子坊ちゃんについていって真剣に芝居をして、猿之助若旦那が帰ってきた時に、みんなで支えられるように頑張っていきたいです」


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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班