里親のAさんをそこまで信じる理由は?
――隼都さんにはどう成長していってほしかったですか?
やりたいことを応援したいけど、私が寂しいから関東の大学に進んでくれとだけ願っていました。あと1年で隼都が帰ってきてくれるというのが私の生きる目標にもなっていました。
帰省の度に何かしらの楽しみを考えておくんですが、春休みには卓球をやろうかなと思って道具も買って待ちかまえていたんです。
それにゲームも、1人でやるものじゃなくて、みんなでやるものならいいかなと思って、隼都が小学生低学年の頃によくやっていたテレビゲームをやろうと思っていました。
親子2人で思い出にふけりながら。ゲームソフトも当時のものを用意していたんですが……。
――お父さんがAさん夫婦を信頼してる理由はなんですか?
Aさんの家にいる子達はみんな楽しそうでイキイキしてるんですよ。食器洗いや掃除など家事の手伝いをちゃんとやらせてくれるのも、子供たちにはすごくいいことだと思います。
隼都が高校に上がるころには、留学生の受け入れのために家の改築もしています。費用負担もかなりのものだと思います。
それにAさんはみんなでどこに行ったとか、イベントがあったとか、ほぼ毎週、画像つきで連絡をしてくれました。
例えば、壱岐のマラソン大会が控えた時期には、隼都の練習に付き合ってくれて、ランニングコースや走った距離など、細かいことまで画像付きで報告がありました。
頻繁に連絡も取ってくれるので、預けている実親さんたちも不信感を抱くはずがありません。
私自身、Aさんの家に預けていて何の不安もなかったし、隼都の捜索中にも実親さんの1人が手伝いに来られて、食事を準備していただいたおかげで、捜索に集中させてもらいました。
Aさんの人柄の良さは、捜索中に島の人と接していてもすごく感じました。捜索には消防団と警察に加え、Aさんのお知り合いの方々が休みも返上して手伝ってくれたんです。
本当に心強かったです。
――Aさんによる虐待がなかったと信じるのもそれが理由でしょうか?
それもありますけど、隼都からも虐待や暴力、理不尽に怒られたなんて話は聞いたこともないし、Aさんを貶す言葉が出たこともまったくありません。
むしろ隼都はAさんを慕っていて、とにかく壱岐での生活が楽しいと会うたびに言っていたんです。昔に比べてとても明るくなったし、問題なく生活してるんだと感じました。
※Aさんがラインで送ってくれた日々の報告や写真の中には、食事の風景も多数あり、椎名さんはその様子を見ながらこう答えた
捜索している間の3月2日から、茨城に隼都を連れて帰るまでの約20日間、Aさん宅にお邪魔していたので食事の様子もわかっています。
そのときに他の留学生たちと話をしました。隼都はかくれんぼが得意だったらしくて、遊びでも本気で隠れるのが上手いから今もなかなか見つからないのかなとか、小さい子とはよくオセロで遊んでくれたとか、卓球が上手かったとか、いろんな話をしてくれてみんな慕ってくれてたんだなと思いました。
料理といえば、隼都はいくら食べても太らない体質なんですよ。私も同じなので遺伝かもしれませんが、小さい頃からガリガリでした。
写真を見て、痩せてるからご飯をちゃんと食べさせてもらえてないんじゃないかと誤解していた人もいたみたいですが、隼都は留学生の中でも一番たくさん食べていたそうです。
隼都は身長176センチで体重48キロで、以前自慢げに「クラスで一番背が高くて一番体重が軽いんだ」と話してました。
あまりに細いので、留学を始めたころは、実家でご飯を食べさせてもらってなかったんじゃないかと同級生からも勘違いされていたそうです。