揺らぐ“暴行容疑”の前提「オーバーに言ってしまった」

るなさんは取り調べのなかで「ショックで食べれない」(被疑者ノートの記載)状態になり、7月3日に嘔吐して救急搬送される。しかし県警と神戸地検は同日中にるなさんを留置場に戻し、翌4日になって釈放している。

釈放翌日のるなさんの体重は、逮捕前より約10キロも軽い27.7キロしかなかった。捜査におびえてA子さんから離れられなくなったるなさんは、心的外傷後ストレス障がい(PTSD)や急性ストレス障がい(ASD)、そして神経性食欲不振症と診断された。

釈放後も体が食べ物を受けつけず下痢や嘔吐を繰り返した。しかし、極端な低栄養状態の人に急に栄養を投与すると起こりうる代謝障害「リフィーディング症候群」が懸念され、治療は難航する。亡くなった頃には、るなさんの体重は19キロ台にまで落ち、死因は「低栄養状態」と推定された。(#1、#2)

釈放後、やせて衰弱したるなさん(仮名) ※「亡くなる前の状態を知ってほしい」との遺族の意向で、顔を隠さず公開します(写真/遺族提供)
釈放後、やせて衰弱したるなさん(仮名) ※「亡くなる前の状態を知ってほしい」との遺族の意向で、顔を隠さず公開します(写真/遺族提供)

神戸地検は、るなさんと同じく、昨年7月7日に否認のまま釈放したBさんを不起訴処分にした。不起訴理由については、「嫌疑不十分」なのか「嫌疑なし」なのか明らかにしていない。だが、県警の捜査の糸口となったYさんは、るなさんの死後、A子さんに「オーバーに言ってしまった。虐待ではないと思った」と認め、同趣旨の手紙も送っている。

問題のバレンタインイベントには35人が参加したが、明石署は逮捕前にYさんと被害申告をしたXさんの親族以外の誰も事情聴取をせず、任意提出や押収による証拠集めもしていないため、「逮捕の根拠は知的障がいを有するYさんの供述のみ」だったと佐々木弁護士は指摘する。そのYさんが当初の申告内容を覆したため、“暴行”自体が存在しなかった可能性も浮上した。

明石警察署(撮影/集英社オンライン)
明石警察署(撮影/集英社オンライン)