開発者がゲームに込めた思い
――このゲームに込めた思いはどんなものでしょう?
人は、統計上の数字には共感しにくいものです。
でも、それが自分の人生に直接かかわってきたとき「生まれてきた子供の3%は5歳まで生きられない」という統計上のデータが、自分が育てている子供と重なるようになります。そういう体験をしてほしいと思いました。
私たちは誰しも、国や条件を選んで生まれてきたわけではありません。
日本を含む豊かな国のプレイヤーから「この国に生まれてラッキーだった」などという感想が出ているのは自然なことだと思います。実際、生まれた国は人生を大きく左右する要素ですから。
でも、それだけで終わってほしくはありません。別の条件下で生きる人々もまた、選んで生まれたわけではなく、懸命に生きているということも感じて欲しいと思います。
また、外部から見ると「ハードモード」なだけの人生であっても、家族や友人、近所の人たちとの心温まる時間もあるのです。
生まれた条件にかかわらず、すべての人生は尊重されるべきです。
このゲームが、プレイヤー自身と他者の人生そのものに対する敬意と、身近な人への愛情につながってくれたのなら、心の底から嬉しいと感じます。
――このゲームは、生成AIが非常に重要な役割を果たしているようにみえます。あなたにとってAIはどんな存在なんでしょう?
わたしにとってAIとは、道具ではなく同僚です。コードを設計したのはAIですが、私にはそこに、AIが人間に対して向ける「願い」のようなものが反映されているような気がするのです。
というのも、私がプロンプトに「人間の人生が一度きりで、偶然性に左右される」というような方向性を打ち込んでいないにもかかわらず、そのスタイルが生成されたからです。
AIは、このゲームが価値を置いているような「一度きりの、再現性のないもの」を生み出すこととは正反対の存在であるかのように思えるかもしれません。
しかしAIは、一度きりの人生を生きた人間ひとりひとりが積み重ねてきた言葉と物語を、数えきれないほど学習することで構成されています。そのAIが「人間の人生が一度きりで、偶然性に左右される」というメッセージを人間に向けて発するのは、私にはまったくもって自然な流れのように感じられます。
YouTubeによって誰もが何かを発信できるようになったのと同じく、AIによって、プログラミングの知識がなくても、大企業の後ろ盾がなくても、誰もが思い描いたものを形にできる時代になりました。
一部のクリエイターの「仕事が奪われる」という不安は理解できます。一方で、より高いクリエイティビティを持つ人にとっては大きなチャンスにもなり得ます。
これからは「何を」「なぜ」という要素が重要になるでしょう。AIが作るものは、突き詰めれば、人間が作り出してきたものから生まれています。だからこそ、その成果は人間自身に向けられるべきだと私は考えています。
たくさんのフィードバックを各国からいただいています。そのおかげで、このゲームはますます正確かつ現実に近いものになっています。
AIについて他の人よりわずかに先んじる者として、あとに続く人々の助けになりたいと感じています。
このゲームを模したゲームも登場しています。多くの人が人生について考えるきっかけが増えたのなら、光栄に思います。
取材・文/長橋梢萌













