「改善していくことを実感することは難しかった」約24年勤務の職員が語る現実
そんな突発的な攻撃は誰もが避けられないだろう。重岡氏は受刑者との関わりの難しさをこう語る。
「かつては『刑務官と受刑者の癒着防止等のため私語は禁止されて』おり、現在も私語は禁止されているものの、拘禁刑以降は刑務官と受刑者の対話が重視され始めました。
対話となれば、受刑者との信頼関係の構築もある程度必要となってくると思いますが、果たしてどれだけの受刑者とそれが可能なのか、不安に思うときもあります」
栃木刑務所で約24年間、作業専門官として勤務する前田陽子さんは「約24年間ここで働いてきて、受刑者が、目に見えて改善していくことを実感することは難しかったですが、拘禁刑に変わり、それぞれの受刑者に合った改善更生に向けた処遇を行う制度に期待したいです」と言う。
「ここは受刑者が改善する瞬間を見届ける場ではありませんからね。そういう意味で我々の仕事のやりがいは、受刑者の改善更生に向けた処遇を滞りなく行うことでありながら、それ以上に同じ職場で働く職員同士の強い連帯感に他なりません。
正直これまで何度も辞めたいタイミングはありました。でもみんなが頑張っているからとここまで続けてきました……」
実は栃木刑務所には「出戻り受刑者」もいる。ある刑務官は言う。
「90代のスリップ(財布のスリ)常習犯は、これまで何度も刑務所への入出所を繰り返してきました。『他人のカバンに財布が入っているのを見ると、盗まないと怠けている気がする』からだそうで、あるとき、所内において、酷暑時に『ご体調いかがですか』と尋ねたら『幸せです!』と満面の笑みでした。
また最近、出所間近のある受刑者に『困りごとは』と尋ねたら『栃木刑務所がなくなること』と寂しそうに言っていました。刑務所が、社会で孤立した人たちの最後の受け皿になっている面もあるのだと感じます」
現場は悲鳴をあげている。そんな栃木刑務所は粛々と閉所に向けた準備をしながら、10月18日に第41回「栃木矯正展」を開催する。
同刑務所によると、見どころは「栃木矯正展初のゲスト、元プロ野球選手で読売巨人軍や横浜ベイスターズで活躍した野球解説者の駒田徳広さんを呼び盛大に実施します。
受刑者の食事を再現したムショ飯も出します」とのこと。昨年の来場客は約5000人だというが、今年はさらに賑わいそうだ。
今は矯正展の準備にも追われ、さらに取材対応などで目まぐるしい忙しさだという白永さんが、刑務所の現場が抱える課題をこう話した。
「拘禁刑が創設され、改善された点も多くあり、受刑者が改善更生するための取組みが前進することはよいことですが、一方で、刑務官の職場環境の改善はなかなか進まない上に、業務負担は減らず、離職する職員も多いことから、いずれ刑務官不足で刑務所の運営が困難になるのではないかと危惧しています」
栃木刑務所はあと1年半でその歴史に幕を下ろす。だが、そこで浮き彫りになった刑務官たちの苦悩まで、施設とともに消えるわけではない。
取材・文/河合桃子













