「寝耳に水でした」国内最大規模の女子刑務所が2028年に廃止へ

2028年4月に廃止される栃木刑務所。現在の建物は1979(昭和54)年に竣工した
2028年4月に廃止される栃木刑務所。現在の建物は1979(昭和54)年に竣工した
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明治5年に「栃木囚獄」として設立された栃木刑務所は、明治39年に女子受刑者の収容を開始した。「栃木刑務所」の名は昭和23年に改称されたもので、現在の建物は昭和54年に竣工。

収容定員は655名のところ、平成18年には定員オーバーの828名に達し、その当時は「6人部屋の共同室に8人を収容していた」そうだ。

「半開放寮」と呼ばれる共同室の内部。6人部屋で、トイレや洗面所は廊下の先にある
「半開放寮」と呼ばれる共同室の内部。6人部屋で、トイレや洗面所は廊下の先にある

その国内最大規模の女子刑務所が2028年3月31日をもって閉所し、4月1日には廃止される。

矯正副長の白永貴仁氏は「我々も昨年12月に言い渡され寝耳に水でしたが、遅くとも2027年の末頃には被収容者をゼロにしないと閉所準備が間に合わない」と言い、現在は「長期刑の受刑者などから徐々に他の女子を収容する刑事施設への移送手配に追われています」と話す。

受刑者の移送手配とは、一体どんなものなのか。

「全国に女性受刑者の収容施設として指定されている刑事施設は、弊所を含め23か所あります。そのうち、弊所を含め5か所がいわゆる女子刑務所と呼ばれる施設で、それ以外は刑務所や拘置所の一区画などに女性受刑者が収容されています。

引越しするとなると、各御家庭でも大変な作業だと思いますが、受刑者を移送するには、受刑者を護送する刑務官や護送車両等の手配が必要です。また、移送先の施設と移送日などの調整をしなければならないのは、当然ですが、人ひとりを移動させるということは、物や書類なども一緒に移動となりますので、それらの確認作業も必要です。

そのほかにも、受刑者の処遇情報についてなど、こと細かく移送先施設に引き継がなくてはならなく、通常の業務も減らない中で、移送業務が増加し、大変な労力です」

半開放寮にある単独室。刑務所内で規律を守って生活してきた受刑者らが入る。中央の人物は著者
半開放寮にある単独室。刑務所内で規律を守って生活してきた受刑者らが入る。中央の人物は著者

栃木刑務所の2026年9月時点での被収容者は、同刑務所によると約300名。2027年末頃までに被収容者をゼロにするとすれば、単純計算で毎月約30名近くを減らしていかなければ間に合わない。これに2025年6月に導入された「拘禁刑」への対応も重くのしかかる。

「作業が義務づけられていた従来の懲役刑に代わり、拘禁刑では個々の受刑者の特性などに応じて24の『矯正処遇課程』が設けられ、いわばオーダーメイド型の処遇が用意されたことになります。

一人一人に処遇の方針を定めて実施する必要があるため、刑務官はもちろん刑務作業の指導を行う作業専門官の負担が大幅に増えています。また、なんといっても若手刑務官の離職が多くなっているのが実情です……」

拘禁刑の導入に合わせて設けられた「リフレクティングルーム」。受刑者が刑務官や心理職の専門官らと、悩みや出所後の進路などについて話す
拘禁刑の導入に合わせて設けられた「リフレクティングルーム」。受刑者が刑務官や心理職の専門官らと、悩みや出所後の進路などについて話す

どうしてそんな事態になっているのか。

「刑務官採用試験には高卒程度試験もあり、若くして刑事施設に配属される女性刑務官もいます。

受刑者の高齢化が進んでいることは周知の通りですが、女子刑務所は男子刑務所以上に顕著で、弊所では今年4月末時点で約470名の被収容者のうち、60代以上は3割を超えていました。認知症の受刑者も複数名いて、朝に出勤と同時に糞尿まみれの単独室の掃除から始まることもあります」