酒に酔っては暴力を振るう姿は友人らにも見られていた

判決によると伊藤被告は2月19日、自宅で妻の初音さん(当時26歳)と口論になり、玄関前の駐車場に突き飛ばして転倒させ、室内に戻った後も顔を繰り返し殴るなどして、外傷性くも膜下出血と急性硬膜下血腫で死亡させた。足立裁判長も指摘したように、怒りにまかせたあまりの、激しく執拗な暴行だった。

伊藤被告は自宅周辺では、シラフのときは気のいい大工の兄ちゃん風情だが、酒に酔うと一転、トラブルが絶えない要注意人物として有名だった。SNSなどによると2017年8月に初音さんと結婚、間もなく息子が生まれたが、酒に酔っては初音さんに暴力を振るう姿は友人らにも見られ、注意されていた。また、夫婦げんかから揉み合いになり、警察官が駆けつける騒ぎを何回も起こしていた。

伊藤被告(本人SNSより)
伊藤被告(本人SNSより)
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さらに大工の腕前を生かしてウッドデッキを作り、週末ごとに仲間を呼んでバーベキューを開いては泥酔してドンチャン騒ぎを繰り返す迷惑な「パリピ」として知られていた。事件当時、近所の男性も取材にこう語っていた。

「酔っ払うと横を通りかかる近所の人を睨みつけたり、仲間同士で『てめえ、やんのかコラ!』とか口論になったりね。みんなガラが悪いから怖くて注意もできないし、駐車場でバーベキューをやるときは車でやってきていたから、飲酒運転もバリバリやってたよね」

一方で妻の初音さんは可愛らしい印象だが、酒が入ると気の強い一面ものぞかせ、伊藤容疑者と口論になった際は突っかかることもあったという。また、ポメラニアンを飼って可愛がり、広場や公園に散歩に出かけると近所の子供たちに犬を触らせて遊ばせてくれる「優しいお姉さん」としても知られていた。

事件から10ヵ月、判決から2ヵ月以上が経ち、年の瀬を迎えても、近所の人たちにとって事件の記憶はまだ生々しかった。近くに住む60代男性はこう語った。

「事件が起きてからこの家には、伊藤被告の親族や同僚が定期的に来てるよ。つい3日前にも同僚っぽいのが家に来てたよ。荷物を運び出してるところをよく見かけるから、ちょっとずつ運び出してるんだろうな。庭にあった物置を運んでるとこ見たけど、子どもの自転車なんかはまだそのままなんだな。あいつの家は親父が建築業を営んでて、跡取り息子だから調子乗ってたんだろう。事件後の荷物運びは同僚がやらされてるんじゃないか」

二人が住んでいた自宅(撮影/集英社オンライン)
二人が住んでいた自宅(撮影/集英社オンライン)

男性は、伊藤被告の父親も見かけたことがあるという。

「事件数日後だったけど、伊藤の親父が仁王立ちしてこの家を見上げながら、舌打ちしたりして怪訝そうな顔してたよ。息子が事件起こしたってのにあの態度はねえよ。それに比べて、殺された奥さんの父親は声も掛けられないくらい落ち込んで、やつれた顔でポメラニアンを連れてってたね。

伊藤と同じ職場のやつに聞いたことあるけど、この家も競売に出すかもしれないって話だったよ。今思い返してもふざけたやつだよな。いつもは大人しくて奥さんの尻に敷かれてるようなタイプなのに、酒が入ると本当に粗暴になって近所の人に『文句があるなら直接言えよ!』とか凄んだりしてたからな」