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「31歳の元除染作業員」として実名で登場

問題の週刊誌記事は9年前、「週刊新潮」の2014年10月16日号(10月8日発売)に「新聞協会賞『手抜き除染キャンペーン』に自作自演の闇がある!」というタイトルで掲載された、5ページの特集だ。この中で梶村容疑者は「31歳の元除染作業員」として実名で登場し、冒頭でこう紹介されている。

「1年以上にわたって150枚超の手紙を本誌に寄せてきた。そこには、<利用するだけ利用して、捨てられた気がします>、<自身の特ダネを得るために、取材者を唆して記事を作ります>などと、使い捨てにされた“情報源”の悲痛な訴えが綴られている」

梶村容疑者(梶村容疑者のSNSより)
梶村容疑者(梶村容疑者のSNSより)
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これに先立つ1年半前の2013年1月4日、朝日新聞朝刊1面トップに「手抜き除染 横行」の縦見出しが踊り、一連のキャンペーンは始まった。

東日本大震災での福島第一原発事故による放射性物質の除染をしている作業員の中に、集めるはずの葉っぱや土を近くの山や川に捨てたり、洗浄に使った水をタンクに入れずにたれ流している者がいた――被災地住民の怒りに火をつけたこれらの“大スクープ”の根幹を支えたのが、記事に「20代男性」として登場する梶村容疑者の数々の「証言」だった。

福島県楢葉町で除染作業員として働いていた梶村容疑者は、「手抜き除染」や「手当金未払い」などが横行し、現場の士気が低下していたことに悩み、環境省に電話したが解決しなかったので朝日新聞本社に“通報”。その後、担当として派遣されてきたのがA記者だった。梶村容疑者が取材に協力した「手抜き除染」の記事は、後に新聞協会賞を受賞するほどの一大スクープとなった。

だが、後に梶村容疑者は、朝日新聞の一連の記事は「自作自演のやらせ」があったと、今度は「週刊新潮」に告発したのだ。

<(朝日新聞の)記事では、作業員が勇気を持って、録音を自身で決意した等となっていますが、実態はA記者からICレコーダーを手渡され、録音を依頼されました。(中略)同記者は、多少誘導的になっても良いから、現場監督の録音が欲しいと言ってきました>

朝日新聞社
朝日新聞社

<12月8日から16日までの間、A記者と一緒に、福島県いわき市にある「わ可ば」と「鬼ヶ城」に宿泊して、取材をしていました。(略)この間の「衣・食・住」の費用は全て、朝日が出してくれました>

<四六時中、A記者と一緒に取材をしていて、賃金に不満を抱いている作業員を唆して、取材をしている印象を持ちました。(略)A記者の携帯に『何処其処の現場で捨てています。早く来て下さい』と作業員から連絡があります。賃金やゼネコンに不満を抱いている作業員が、腹癒せ に不法投棄のヤラセをしていました>
(梶村容疑者が「週刊新潮」に送った手紙より。原文ママ)

実は梶村容疑者はこの「告発」を、収監された拘置所から行なっていた。というのも梶村容疑者はいわき市内の同じ寮で生活していた除染作業員に7万円の横領罪で訴えられ、2013年の4月に警察に逮捕されていたのだという。

「週刊新潮」がこれを報道すると、朝日新聞は「記者が元作業員に指示していたかのような内容になっていますが、そうした事実はありません」とし「事実誤認」と反論するとともに、当時の週刊新潮編集長宛で抗議書を送ったという。