「隼都が自殺を選ぶわけがない」
——事故の可能性もあると。
実のお父さんと遺体を見たんですけど、骨一本折れてなかった。洋服は着たまま、片方のスニーカーだけ脱げていて、ふくらはぎに打撲の痕があったと警察に聞いた時に、海岸に逃げて隠れて滑って岩とかに足を打ったりしたのかなと思いました。
隼都は泳げないんです。海に遊びに行っても浮き輪がないと泳げないぐらいで。だから僕らの中では自ら死を選んだのではなく、逃げてる最中に滑ってしまったのかなって。だからこうやって話せるんですよ。実親さんも同意見でしたけど、僕も事故としか思えないんですよ。
――Aさんから見て隼都くんはどんな子でしたか?
不器用ですね、本当は自分の意思があるのに、まわりの目を気にしてそれを伝えられない、とにかく人を気にする子でしたね。
外では大人しいけど、家では意外と盛り上げてくれる一面もあって、誕生日会で仮装することもありました。留学したてのころに比べて地声が大きくなってることに気づいて、それを褒めたら喜んでくれたこともありました。
高校1年の時にダブルスのソフトテニスの試合で負けて、「負けたのは自分のせいだ」って、嫁さんの膝で泣いてたこともありました。感情を内に溜め過ぎてたまに爆発したりするけど、普段は自然に消化できる子でした。
でも今年の1月に同室の子が出てしまってからは、感情が消化されなくて抑えられなくなってしまったようでした。
あとは褒められるのが好きだから、僕と隼都で交代制でやってた洗濯物の当番だけじゃなく、皿洗いもよく手伝ったり、みんなにも片付けしようと声かけもしてくれた。それが部活動でも表れていて、コート整備やボール拾いも一番熱心にやっていたみたいです。
中学2年の秋にこっちに来て、長い期間一緒に暮らしてきたんで、島内も島外も色々と一緒に遊びに行きましたし、僕の好きな釣りにも一緒に来てくれました。あとは上海に行きたいとかで中国語も勉強していて、ちゃんと目的を持って行動してたんですよね。
自殺を信じられないのはそういうところなんです。隼都がそれを選ぶわけがないというか。他の子たちも同じで自殺とは思ってないですね。21日にうちで通夜をして、23日まで隼都の部屋に安置して、24日の朝に実親さんと一緒に茨城に行って親族に挨拶とお詫びしてきました。
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離島留学制度を担当している壱岐市役所教育総務課によると、Aさんがこれまで里親として預かってきた留学生は椎名さんを含めて18人。同課は聞き取り調査などをした結果としてこう答えた。
「異常はなかったと判断しています。実親さんや他の留学生からも体罰といった話は聞いたことがありません。実親さんから里親さんに対して『信頼している』や『安心して預けられる』という言葉をいただき、みなさんが同じ里親さんの継続を望んでいると、教育長からも報告を受けています」
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班