劣等感を解消するには「やるしかない」
――若い頃に欠点やコンプレックスだと思っていたことが、年齢を重ねた今では武器になったと感じる部分はありますか?
若い頃は当然、売れたくてやっている部分もあるので、先に世の中に認知されて、いわゆる売れている人を見ると、すごくうらやましいなと思ったし、劣等感も感じました。でも結局、それを解消できるのは、経験がすべてだと思うんです。
練習、実践、場数を踏んで演じるしかない。やらずにそこへ到達することはできないので、できないと思うことがあるなら、しっかり向き合わないとダメだと思います。そのことを知れたことはよかったと感じます。
――高校生の頃の玉木さんが、現在の自分を見たら何に一番驚くと思いますか?
俳優を続けていることですね。若い頃、この仕事を続けることは一応夢ではありましたが、3年目くらいの頃には、この夢をあきらめて、別の仕事に就く可能性を考えたこともありました。20歳くらいの頃ですね。だから、俳優を続けていてよかったなと思います。
多くの方に認知はしていただいていると思うんですけど、「売れてる実感って何だったんだろう?」というのは、振り返ってみてもよくわからない。わかりにくいまま今があるという感じですね。
――まだ経験していないことに挑戦するとき、「うまくできるかわからない」という感覚は今でもありますか?
あります。芝居なので似たようなことではあるけど、ジャンルが違えばキャストもスタッフも違う。毎回、飛び込む意識がないとできないものだと思います。ただ、そこは経験値がカバーしてくれるところもある。
仕事に限らず、今やっている柔術もそうです。スポーツなので当然、勝ち負けがあって、負ければ悔しい。その悔しい気持ちが、成長したいと思わせてくれる一歩だと思うんです。
ずっと勝ち続けている有能な人もいるので、負けと劣等感を知ることができる。すごいものはやはりすごい。そのすごいものに近づくためにどうするかを考えると、自分のやり方が見えてくる。何事もチャレンジすることはすごく大事だと思っています。
――大人になると、新しいことに挑戦したくても、時間がない、今さら始めても、とブレーキを踏んでしまうこともあります。玉木さんはどうやって最初の一歩を踏み出しますか?
もちろん大人になると家族がいたり、金銭的なことだったり、物理的に難しいことはある。でも興味を持ったことに対しては「自分だったらどういう形でアプローチできるかな」と考えます。
最初の一歩をクリアして、数年我慢して続けられたら、それは本物だと思うんです。逆に合わなければやめればいい。そのへんはスパッと線引きをしています。
――数年続けてみるというのは、なかなか根気が必要ですよね。玉木さんにも三日坊主で終わってしまった経験はありますか?
若い頃はそういうこともあったんです。でも、自分自身、根気がないなと思っていることが嫌だったんです。
ある程度の年齢になってからは、とりあえず何が何でも続けてみようと。本当に嫌だったらやめればいいんですけど、ある程度は我慢するというか、耐えることも大事だと思うようになりました。
――最近、「自分はまだこんなに夢中になれることがあるんだ」と思ったことは?
それこそ柔術かな。最近も大会に出ましたけど、まったく仕事に関係のないところで、こんなに熱量を注いでやれるものがあるだけでもありがたいと思います。大変なこともありますけど、大会に出るという目標を形にできたのもうれしかったし、この先もやっていきたいと思っています。
――ちなみに今日も仕事前に練習を?
今日は3時間練習しました。朝4時半に起きて、子どもの世話、お弁当作り、子どもを送ってから、そのまま道場に行って練習。道場から直接、ここに来ました。
――3時間も! 普段はどんな練習をしているんですか?
30分ほど技の練習をして、30分スパーリング、その後はプライベートレッスンを1時間入れて、さらに練習したりしています。最近は試合が近かったので、毎日やっていました。
取材・文/松山梢 写真/石田壮一
『どこよりも遠い場所にいる君へ』
ある秘密を抱え、都会から離島・采岐島へやってきた高校生・月ヶ瀬和希と、“神隠しの入り江”で出会った1974年から来た謎の少女・秋鹿七緒の物語。阿部暁子の同名小説(集英社オレンジ文庫)をアニメーション映画化。監督は和田純一。石橋陽彩、永瀬アンナ、土屋神葉、上坂すみれ、藤木直人(友情出演)、玉木宏らが出演。2026年10月9日(金)全国公開。
©阿部暁子/集英社・『どこよりも遠い場所にいる君へ』製作委員会
配給: 松竹
2026年10月9日(金)より公開中













